本研究は、「宇宙プラズマにおいて普遍的に起きている磁気再結合と粒子加速の理解」を目指し、太陽フレアに対する軟X線の2次元集光撮像分光観測の実現を目的としている。この観測により、X線のエネルギースペクトルを空間分解能・時間分解能を持って取得することが可能となる。つまり、太陽コロナを占めるプラズマの物理情報を、各構造毎に、時間発展を追いながら調べることが可能になる。本研究では、この観測の実現に向け、裏面照射型CMOS検出器を用いた軟X線高速度カメラを開発し、1ピクセルに複数のX線光子が入射するよりも速く読み出すことで、X線光子1個1個の情報を取得するという手法を取る。 2020年度は、日米共同の太陽X線観測ロケット実験FOXSI-3(2018年打ち上げ)で取得に成功した世界初の太陽コロナ(非フレア時)軟X線・2次元集光撮像分光観測データの解析と、その観測に用いた機器の較正を実施した。機器較正結果の一部は論文として出版するなど、較正作業は終盤である。データ解析では、FOXSI専用の解析ソフトを整備しつつ、太陽コロナ中の微小なエネルギー解放現象に着目し研究を進めている。 また、将来の太陽フレア観測を目指し、FOXSI-3で用いたCMOS検出器の改良(完全空乏化した厚い感受層)をメーカと協議した。そしてメーカーによる試作が完了、我々の手で評価を実施した。その結果、FOXSI-3の検出器で問題となっていたX線に対する耐性不足の大幅な改善が確認できた。また、簡易測定ではあるが、高エネルギーX線に対する感度向上も見られた。以上より、太陽フレア観測用として、現時点での最高レベル性能のCMOS検出器の獲得に至った。 更に、我々が提案していた、太陽フレア観測を目的とした観測ロケット実験計画FOXSI-4(2024年打ち上げ予定)が米国NASAに最高評価で採択された。これにより、世界初の太陽フレアに対するX線・2次元集光撮像分光観測実現の道筋を付けることも出来た。
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