研究課題/領域番号 |
18H03725
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
浅山 信一郎 国立天文台, チリ観測所, 准教授 (60390621)
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研究分担者 |
小嶋 崇文 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (00617417)
伊王野 大介 国立天文台, アルマプロジェクト, 准教授 (60425402)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 星形成 / LIRGs / ALMA / AGN / SIS素子 / THz / ASTE |
研究実績の概要 |
令和元年度には、高臨界電流密度SIS 素子を用いて広帯域性能を実現した最新のSISミクサを搭載したTHz帯超高感度受信機を、ASTE望遠鏡に搭載して科学的評価試験を行い、近傍星形成領域等の試験観測にも成功した。これによりASTE においてALMA Band 10 周波数帯の科学観測が可能であることが実証されただけでなく、南米の10mクラスの大型電波単一鏡に搭載された世界最高性能のTHz帯観測システムの構築を実現した。
THz帯受信機の開発においては、THz帯の反射防止(Anti-reflection, AR) 構造を施したクライオスタット用真空窓の開発を進めた。当該年度はシリコン基板の片面に50 um程度の凹凸を有する1層のAR構造を設計し、深堀エッチング法を用いて作製した。THz-TDSを用いた評価結果により、光学的な透過特性はシミュレーションとほぼ一致する結果を得ており、最も基本的なAR構造の設計・作製手法を確立した。さらにTHz帯広帯域SISミクサの開発として、国立天文台保有のサイドバンド分離型低雑音受信機とチリ大学が有するデジタル振幅・位相補正技術を適用し、サイドバンド分離比の大幅な向上を狙うとともにTHz帯での実用化への課題を抽出することを目的とし、チリ大学より技術者を招聘し3月11日-31日の間、国立天文台先端技術センター(三鷹)において共同実験を実施した。その結果国立天文台の受信機を用いた原理実証に成功し今後の実用化に向けた有望な結果を得られた。
また去年度に引き続き、本研究課題で予定している高回転遷移の一酸化炭素輝線観測の準備研究として、ALMA望遠鏡を使ったLIRGsやULIRGsの低回転遷移の輝線観測を進めた。平行して、LIRGsにおいて複数のCO輝線を系統的に観測するための、観測計画の立案や、観測データと比較するためモデルの構築の準備を進めた。さらにASTEを用いたサブミリ波、THz帯のサイエンスを議論すべく、研究会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
THz帯受信機をASTE望遠鏡に搭載し、複数の天体からの信号検出による実証を行うことに成功した。また実験室においてもTHz帯SISミクサ基礎研究開発が進んでいる。また、関連する準備研究として行なっている、観測計画の立案や輻射輸送プログラムの理論モデルを参照し、観測データと比較するための準備も進めている。こうしたことから、本課題は着実に進展していると判断している。一方で、新型コロナウイルスの世界的感染拡大のため、チリ現地への渡航制限や安全面での問題など、当初予期しなかった情勢の変化もあり、令和2年度に、当初予定通りに進められるかどうかについては、やや不透明な点も生じている。まずは安全面を最重要なポイントとして無理はせず、実験室での実験や観測計画立案等を進めつつ、チリでの活動については、情勢見極めつつ慎重に進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
去年度に引き続きSISミクサの開発を行う。また去年度にASTE望遠鏡に搭載したTHz帯受信機を用いて科学観測を行う。平行して、LIRGsにおいてCO(6-5)、CO(7-6)、CO(8-7)、CO(9-8)の輝線を系統的に観測するための、観測計画の立案を行う。また輻射輸送プログラム(RADEX: Van der Tak et al. 2007)やMeijerink et al. (2007)やWolfire et al. (2010)の理論モデルを参照し、観測データと比較するための準備を行う。チリ現地での活動については、安全面を最重要なポイントとして無理はせず、慎重に進めていく予定である。
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