研究課題
本研究は、磁化天体に普遍的な高エネルギー粒子加速機構を解明することを最終目的として、宇宙空間で生じる電磁波と粒子との間のエネルギー交換過程について究明した。目的を達成するために本研究では、【1】あらせ衛星を中心とした地球磁気圏・放射線帯領域での衛星観測データを用いた解析研究、【2】大規模計算機実験による惑星電磁圏での波動・粒子間の共鳴過程の究明、【3】WPIA機上ソフトウェアの最適化とWPIA手法の確立、をそれぞれ実施した。2019年度は課題【1】に関して、あらせ衛星による観測結果の解析により、ホイッスラーモード・コーラス放射と数keV-数十keVのエネルギー帯の電子との共鳴現象を捉えたイベントの事例解析ならびに統計解析を実施した。特に、ピッチ角散乱により大気へ降下する電子とコーラス放射の波動強度との対応に高い相関が見られること、コーラス放射の波動強度ががPc-5帯のULF波動と同期して増幅するイベントが見出され、数十keV帯の電子の温度異方性ならびにフラックスがULF波動によって大きな変調を受けることにより生じていることなどを明らかとした。課題【2】に関して、コヒーレントなホイッスラーモード波動による低ピッチ角電子の共鳴現象に関する計算機シミュレーションを実施して、ピッチ角の小さい電子に対して生じる特異な非線形過程の存在を見出し、ピッチ角が大きく変動する要因を理論的に明らかとした。課題【3】に関して、前年度までに検討した「位相の連続性」を保証するために最適なフィルタや波形処理フローを、WPIA処理に取り入れ、処理結果に及ぼされる影響を検討した。木星氷衛星探査ミッションJUICEにおけるS-WPIAでの解析フローについて、JUICE搭載機器の仕様に基づいた観測シーケンスを検討し確立した。以上成果は8編の学術論文ならびに招待講演7件を含む30件の国内外での学会・研究会での発表として公表した。
2: おおむね順調に進展している
本研究で中心課題としている衛星データ解析研究、シミュレーション研究、WPIA手法の検討のそれぞれについて当初の計画通りに進められており、成果も既に上がっている。研究組織内での議論は円滑に進められており、当初の研究計画に対して順調に進展していると判断される。
研究は順調に進展しており、次年度も当初の研究計画に従って研究を遂行する方針である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 8件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 13件、 招待講演 7件)
Geophysical Research Letters
巻: 47 ページ: -
10.1029/2019GL086040
Journal of Geophysical Research: Space Physics
巻: 124 ページ: 5568~5583
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巻: 46 ページ: 12685~12692
10.1029/2019GL085499
巻: 124 ページ: 10036~10047
10.1029/2019JA027061
巻: 46 ページ: 8643~8651
10.1029/2019GL084163
巻: 124 ページ: 5719~5733
10.1029/2019JA026682
巻: 124 ページ: 5056~5069
10.1029/2019JA026553