研究課題/領域番号 |
18H03732
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
朴 進午 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70359199)
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研究分担者 |
山口 飛鳥 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (30570634)
芦 寿一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (40251409)
鹿児島 渉悟 東京大学, 大気海洋研究所, 特任助教 (70772284)
鶴 哲郎 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (80371730)
高畑 直人 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90345059)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 巨大津波 / アウターライズ地震 / 正断層 / 日本海溝 |
研究実績の概要 |
1.JAMSTECが2011年に宮城沖日本海溝を横切る測線上で取得したマルチチャンネル反射法地震探査データの再解析を行った。まず、エアガンバブルや多重反射を除去するなど高度な前処理を実施した後に、重合前深度マイグレーション処理を行い、アウターライズに発達する正断層群で形成されるホルスト・グラーベン(地塁・地溝)構造の詳細イメージングやP波速度モデルの構築に成功した。既存データを用いて、活断層が発達する海域の断層に沿う流体移動に関する検討を行った。その結果、活断層から上昇する流体の痕跡を確認した。 2.大規模アウターライズ地震断層を理解する上で、海溝の陸側斜面に存在する断層を研究することも重要である。日本海溝の陸側斜面で採取した堆積物直上の海水および堆積物中の間隙流体の分析を進め、2011年東北沖地震後の地震断層の挙動について流体循環の影響を評価した。陸上火山地帯で水・ガス試料のサンプリングと分析を実践することで、航海における流体試料採取法とヘリウム同位体などの測定手法の検討を行った。また、2019年度以降の航海に必要な機材を購入し観測の準備を進めた。 3.新青丸に搭載のサブボトムプロファイラーを用いた海底下浅部構造探査データの処理を行い、プレート沈み込みにともなう変形作用、特にホルストアンドグラーベン構造の発達と堆積作用の関係についての情報を取得した。 4.三陸沖アウターライズにおいて採取されたピストンコアのX線CT撮影およびスミアスライド記載を行いアウターライズ地震断層近傍におけるイベント堆積物認定手法の検討を行った。アウターライズにおいて堆積層が薄くプチスポットの貫入が疑われる箇所の掘削計画の立案を行い、IODPにプロポーザルを提出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた調査航海による新規データは取得されていないものの、既存データを活用した研究は進み、また来年度に予定されている新規データ取得の検討が進むなど、当初の研究計画はおおむね順調に進展している。特に、海底地形解析や既存MCS/SBPデータ解釈によって、大規模アウターライズ地震断層の候補を選定し、アウターライズ地震断層の物性解析手法を確立した。来年度に取得される新規MCSデータを用いた重合前深度マイグレーション処理による地殻構造イメージングやP波速度構造モデル構築のワークフローを確立した。また、地震発生履歴の解読に必要とされる採泥・採水の観測点や、堆積物・流体試料の分析手法に関する検討が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
1.岩手沖や宮城沖アウターライズに発達する正断層群を調べるため、高分解能マルチチャンネル反射法地震(Multi-Channel Seismic reflection: MCS)探査を実施するとともに、構造解釈を行う。反射極性・反射係数・減衰特性を推定する。また、正断層群の活動性や断層強度などの物性を評価するため、MCSデータを用いた反射極性・反射係数・減衰特性を推定する。 2.アウターライズの正断層群付近の観測点でピストンコアラーおよびマルチプルコアラーによる採泥を行う。得られたコアを高知コアセンターにて分析し、断層運動履歴を評価する。また、SBP記録の処理を行い堆積構造の詳細を求め、断層変位の履歴に関する情報を取得する。 3.研究船航海により大規模アウターライズ地震断層付近で堆積物試料を採取し、間隙水中のヘリウム同位体分析等を実施することで流体循環・断層の挙動に関する情報を収集する。また、比較のため、別の海域のヘリウムフラックスについても調査する。
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