研究課題
1.2019年4月、宮城沖や三陸沖日本海溝海側のアウターライズでマルチチャンネル反射法地震探査(Multi-channel Seismic:MCS)(「新青丸」KS-19-5次航海)を実施した。合計2測線で(全長150 kmの測線1と全長100 kmの測線5)MCSデータを取得した。MCSデータを用いた重合前深度マイグレーション処理の結果、ホルスト・グラーベン構造を形成する多数の海底活断層(アウターライズ断層)の高解像度構造をイメージングした。また、三陸沖アウターライズのMCSデータ上で確認された明瞭な正断層の付近の減衰特性を解析した。その結果、その断層の海側と陸側で最上部マントルの減衰特性が側方変化していることが示唆された。現在、詳細解析を実施中である。2.「新青丸」KS-15-3次航海で東北沖アウターライズから採取されたコアの物性・組成分析からイベント層を認定し、グラーベン充填堆積物において数千年に1度程度の頻度でおそらく地震性と考えられるイベント層が堆積していることを明らかにした。海底下浅部構造については「新青丸」KS-19-14次航海においてサブボトムプロファイラー記録を得た。東西の主測線においては、海溝から約40, 30, 25, 10 km沖側に地溝が認められ、海溝に向かって地溝を埋積する堆積物の層厚化、断層の発達頻度の増加、地層の海溝側への累積傾動が認められた。3.「新青丸」KS-19-14次航海において東北沖アウターライズでピストンコアラーを用い、流体循環の推定に必要とされる堆積物・間隙水試料を採取し、堆積物および間隙水中のヘリウム同位体を分析した。海底火山海域や日本海溝の陸側斜面における分析結果と比較し、得られたデータを検討したところ、マントル由来と考えられるシグナルを発見した。現在、地殻構造イメージングの結果と付き合わせて地震断層の構造を精査している。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していた調査航海によって新規データが取得されており、既存データを活用した研究も進んでいる。また、来年度に予定されている新規データ取得の検討が進むなど、当初の研究計画はおおむね順調に進展している。MCSデータを用いた重合前深度マイグレーション(Pre-stack Depth Migration)処理の結果、大規模のアウターライズ断層の高解像度構造がイメージングされている。特に、MCS測線上で採泥・採水調査を実施し、大規模のアウターライズ断層周辺で採取した表層堆積物の間隙水中にマントル起源のヘリウム同位体(3He/4He)異常を発見した。これは、アウターライズ断層に沿ったマントル流体の上昇(例:湧水)を示唆する。
1.岩手沖や宮城沖アウターライズに発達する正断層群を調べるため、高分解能マルチチャンネル反射法地震(Multi-Channel Seismic reflection: MCS)探査(新青丸MCS航海)を実施するとともに、構造解釈を行う。また、減衰特性を利用して構造面と物性面から岩手沖と宮城沖の正断層群の比較検討を行う。2.新青丸KS-19-14次航海によって東北沖アウターライズで採取された堆積物の分析を進める。具体的には、X線CTに基づく堆積構造の確認ののちにコアの肉眼記載、物性分析、化学分析を行い、アウターライズ地震によって堆積したと考えられるイベント層の認定を行う。また、火山灰分析により堆積年代を推定し、アウターライズ地震の発生間隔を推定する。新青丸KS-17-14, KS-19-5, KS-19-14次航海で得られたサブボトムプロファイラー記録とこれまでに採取されたコア試料の対比を行い、定常時の堆積層とイベント層の分布を求めるとともに、堆積層の変形を明らかにする。これにより、アウターライズ地震による堆積・変形作用に関わる情報を得る。3.2019年度にアウターライズ地震領域で採取した試料の分析を進めるとともに、別の海域のヘリウムの結果と比較し、流体がマントル由来であるか検討する。結果をまとめ学会発表、論文にまとめる。新青丸KS-19-14次航海において東北沖アウターライズで獲得した堆積物試料から間隙水を抽出し、ヘリウム同位体等の分析とデータ解析を進める。得られたデータからアウターライズ地域における流体循環を推定し、成果を国内・国際学会などで発表する。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 4件)
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