研究課題/領域番号 |
18H03733
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山野 誠 東京大学, 地震研究所, 教授 (60191368)
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研究分担者 |
佐野 有司 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (50162524)
朴 進午 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70359199)
平野 直人 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (00451831)
川田 佳史 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (50402558)
片山 郁夫 広島大学, 理学研究科, 教授 (10448235)
土岐 知弘 琉球大学, 理学部, 准教授 (50396925)
笠谷 貴史 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 主任技術研究員 (90373456)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海洋地殻 / アウターライズ / 太平洋プレート / 熱輸送 / 流体循環 / 地殻熱流量 / プチスポット / 日本海溝 |
研究実績の概要 |
1.2018年9月の「白鳳丸」KH-18-5航海により、北海道沖千島海溝海側のアウターライズにおいて地殻熱流量の測定を行った。一部の点のみにおいて、沈み込む太平洋プレートの年齢に対して有意に高い熱流量が測定され、熱流量分布の特徴が日本海溝とは異なることが判明した。この航海では、熱流量測定用温度プローブの改良に向けての機器動作試験も行った。また水晶温度計・恒温槽を購入し、温度センサの特性試験の精度を高めた。 2.2018年8月の「新青丸」KS-18-9航海において、日本海溝海側の太平洋プレート上で活動するプチスポット火山の岩石採取を行った。特異な化学組成を示す、極めて若い溶岩試料が得られた。また複数薄片作成装置を導入し、岩石試料の処理を効率化した。 3.メタン,水素,二酸化炭素等の濃度を高精度で測定するためのガス分析システムを整備し、海底下深部から移動してくるガスの検出感度を向上させた。陸上火山地帯において水・ガス試料の採取・分析を実践し、海域での流体試料採取法、ヘリウム同位体などの測定手法を検討した。 4.宮城沖日本海溝を横切る測線で過去に取得された反射法地震探査データの再解析を行い、海溝海側に発達する正断層による地塁・地溝構造の詳細イメージングやP波速度モデル構築に成功した。既存の海底電磁気観測データを新たな手法を用いて解析し、岩手沖日本海溝アウターライズ下の海洋プレート内の比抵抗構造を求めた。 5.室内実験により、海洋地殻・マントルを構成する岩石の浸透率、間隙のサイズを測定し、海洋プレート上部における流体移動について考察した。 6.既存の地殻熱流量データに基づき、1つのプチスポット火山を通る水循環の流量と熱輸送量を見積もった。堆積物から突き出た複数の山体における水循環・熱輸送の数値計算を行い、熱流量観測値は、水が1つの山から流入し他から流出することで概ね説明できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
千島海溝海域における熱流量測定、日本海溝海域における岩石採取とも、航海中の台風の影響により計画の一部が実施できなかったものの、これまで未調査であった地域でデータ・試料を得ることに成功し、アウターライズにおける流体循環・火成活動について重要な知見を加えることができた。 温度センサの特性試験、ガス試料分析等のシステムの整備を進めることにより、今後実施する熱流量測定、間隙水分析等の観測調査において、より高精度のデータを得る体制を整えることができた。 熱流量測定用温度プローブ改良のための海中試験により、測定機器への衝撃が計測に影響することが判明したが、この問題点を解決する方法の検討を行った結果、既に設計変更を終え、次年度に再度の試験を行う準備を進めている。 次年度に実施すべき観測調査について議論した上で、アウターライズ上のプチスポット火山が海洋地殻内の流体循環に及ぼす影響を調べる調査航海の提案を行い、採択された。
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今後の研究の推進方策 |
千島海溝海側の熱流量分布が日本海溝と異なる特徴を示すことが判明し、既存の地震波速度構造の情報と合わせて、両海溝の間の違いが明らかになってきた。この違いを調べることは、海溝海側で海洋プレートに水が入る過程を解明するために非常に重要である。今後、本研究における重点課題として、千島海溝海域での電磁気探査等も含めた調査観測を計画する一方、他の研究計画による地殻構造探査等とも密接に連携する。また、両海溝の構造の違いを取り入れ、熱流量分布の差を説明する流体循環と熱輸送のモデルの構築を試みる。 海溝海側において沈み込むプレートに生じる過程、それが沈み込み帯に及ぼす影響について、本研究が対象とする流体と熱の移動にとどまらず、より総合的な研究を推進する。このために、沈み込み帯へのインプットをテーマとした学会セッションや研究集会を開催し、沈み込んだプレートに関する研究も含めて、幅広い分野の研究者との情報交換・議論を進める。また、日本海溝アウターライズを対象とした2つの掘削調査提案との協力も深めていく。
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