研究課題/領域番号 |
18H03734
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平賀 岳彦 東京大学, 地震研究所, 准教授 (10444077)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オリビン / マントル / 超塑性 / 拡散クリープ / 粒界 |
研究実績の概要 |
不純物をほとんど含まないオリビン多結晶体試料と、オリビン粒界に偏析することが知られているCa及びAlを微量添加した試料を作製し、その粒界拡散クリープ(超塑性)特性を調べた。無添加試料は470 kJ/molの活性化エネルギーを持つことがわかった。添加試料は低温では無添加試料とほぼ同じ固さを示す一方、高温では無添加試料よりも柔らかく、高い活性化エネルギー (~ 700 kJ/mol) として表現できることが明らかになった。この結果は、拡散クリープ下での結晶軸選択配向の発現で示されたオリビン低指数面粒界の発現で推定された融点近傍での粒界の構造無秩序化(disordering)に原因が求められた。disorderingによるクリープ速度の促進は試料のソリダスと相関があることから、ソリダスの関数として化学組成の効果を含むオリビン多結晶体の粒界拡散クリープ則を決定した。その流動則を、これまでのオリビン多結晶体の粒界拡散クリープにおける実験データと比較した。本研究の流動側によって、すべての先行研究のデータが説明できることが分かり、含水条件下まで適用可能な粒界拡散クリープ則を確立することに成功した。確立した流動則を基に、海洋上部マントルにおける粒界拡散クリープ変形での粘性率プロファイルを決定した。捕獲岩の微細構造から、粒径は1 mmと推定した。その結果、中央海嶺下では、地表付近から約200 km 程度の深さまで粘性率が約10^19 Pa s、また50 Maの海洋マントルでは、100-200 km の深さにおいて粘性率が約10^19 Pa sとなり、アセノスフェアで観測される粘性率 と一致した。またどちらの場所でも深さ200-400 km の範囲では約10^20 Pa sとなり、アセノスフェアは粒界disorderingによってよく説明されることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒界構造の無秩序化がオリビン多結晶体の超塑性変形(拡散クリープ)を促進させることを見出し、それがアセノスフェアの成因であるという新しいマントル観を創生させることに成功した。この成果は、2本の論文として国際誌に投稿中であり、予定通りの進捗である。
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今後の研究の推進方策 |
上部マントルの粘性構造の説明後は、下部マントル流動の粒成長とのカップリングの論文を現在まとめており、その投稿までを目標とする。また、高温下でのオリビン多結晶体のangular 押し出し実験を行い、マントルコーナーフロー時の粒成長と結晶軸選択配向の関係を調べる予定である。
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