研究実績の概要 |
造岩鉱物における超塑性変形(拡散クリープ)をオリビン以外で起きるかを検証するために、上部マントルおよび下部地殻の主要鉱物である単斜輝石多結晶体の高温変形特性を調べた。高温・大気圧下での一軸圧縮試験より単斜輝石(CaMgSi2O6)の高温変形特性を明らかにすることに成功した(Ghosh et al., 2021 JGR)。具体的には、通電焼結法を用いて僅かにフォルステライト(Mg2SiO4)もしくはアノーサイト(CaAl2Si2O8)を含み、粒径が0.43 μm から4.07 μm まで大きく異なる高緻密多結晶体を合成した。本試料を1050~1170℃下での変形実験に用いた。同じ粒径および温度において、アノーサイトを含む試料がフォルステライトを含む試料の3倍程度柔らかい。応力-歪速度の線形的な関係から拡散クリープであること、また、粒径-粘性率の関係から体(結晶内)拡散がクリープを律速していることが分かり、試料間の固さの違いは、Alの単斜輝石格子拡散への促進効果と考えられる。これらの実験結果に基づいて、単斜輝石の拡散クリープ則を提案した。本クリープ則を基準にこれまでに複数の研究グループから報告された実験データを再解析した。従来、粒界拡散クリープと認定され各報告間で矛盾するデータとされてきたものが、体拡散クリープで統一的に説明できることを示した。得られた拡散クリープの著しく大きな活性化エネルギー720 kJ/molは単斜輝石を主要とする岩石の高温下での著しい弱化を予想する。
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