研究実績の概要 |
上部マントル主要鉱物であるオリビンの結晶軸が、岩石中である方向に配向することが知られ、上部マントル内の地震波速度異方性の成因と考えられている。せん断面およびせん断方向に対して結晶軸が並ぶパターンに様々なものがあることが知られている。Miyazaki et al. (2013 Nature) において、拡散クリープ下で結晶軸選択配向が生じること、Maruyama & Hiraga (2017ab JGR)で、その配向が粒界すべりによって生じることを明らかにした。本研究では、様々な結晶軸選択配向パターンが拡散クリープで生じるかを実験的に調べた(Kim et al., 2022 JGR)。Miyazaki et al. (2013) およびMaruyama & Hiraga (2017ab)で用いた同一試料であるオリビン+20vol%ダイオプサイド多結晶体に対して、異なる温度、変形時間条件での純粋せん断変形実験を行った。オリビンのb軸がせん断面の法線方向に集中するタイプ、その集中に加えてa軸がせん断方向に並ぶタイプ、配向しない(ランダム)タイプが見いだされた。そのタイプが、オリビン粒子形で決定されていること、粒子形は粒子成長と共に変化することが分った。これまで、オリビンの配向およびそのパターンは、転位クリープ下での水の有無、応力の大小、温度の違い等によって変化すると考えられてきたが、我々は、粒成長によって粒界すべりし易い方向が変化し、それに応じて結晶軸選択配向パターンが変化するという新しいメカニズムを提案する。
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