研究課題/領域番号 |
18H03737
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
富田 裕之 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特任助教 (10435844)
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研究分担者 |
加古 真一郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (60709624)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 台風 / 台風海洋相互作用 / 海面フラックス / 大気海洋相互作用 / 衛星リモートセンシング |
研究実績の概要 |
時に人類社会に甚大な被害をもたらす「台風」は海洋上で発生し発達する。正確な予報が望まれることから数値モデルを用いた研究が盛んに行なわれているが、その予測精度は十分でない。このことは台風海洋相互作用の理解が十分でないことを意味する。これまで台風海洋相互作用の理解のために主に海水温と台風の間接的な関係が調べられていたが、より正確な理解には両者を直接的につなぐエネルギーのやりとり「海面フラックス」について観測的な研究をするべきである。本研究は、これまでに無い新しい衛星観測の利用や先進的なアルゴリズム開発を通して台風に特化した海面フラックスの定量化手法を確立し、これにより海洋から台風へのエネルギー供給量を観測的かつ世界最高水準の正確さで把握することが可能な衛星海面フラックスデータベースを構築する。さらに、既存の台風と海洋に関する観測データと併せた解析から台風に対する海洋の役割を観測的かつ定量的に解明することを目的とする。 研究期間の初年度である本年度は5月にキックオフミーティングを名古屋大学宇宙地球環境研究所で開催し研究活動を開始した。そして、本計画を遂行するにあたって必要不可欠な研究開発環境を整備しデータ取得や物理パラメータの推定手法の研究を本格的に開始した。より具体的には、台風時の人工衛星海上大気比湿の推定手法、および海面フラックスを推定手法を研究するための衛星データ処理および計算サーバ等を名古屋大学宇宙地球環境研究所に整備した。また海上風ベクトル推定に関わる衛星データ処理手法を研究するためのサーバ等を鹿児島大学に整備した。整備された研究開発環境を用いて台風時の海面フラックス推定に必要なデータを取得し、物理パラメータの推定手法の開発を開始した。 またCYGNSS衛星等の新しい衛星観測のインパクトを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の大部分において、ほぼ当初の予定どおりに進んで成果が得られた。サーバやストレージ等の研究環境の整備やデータ取得の仕組みの構築などについて順調に遂行できた。一方で、事例を選んだ台風の解析については、台風時のフラックスの推定手法を確立するための調査の過程で、過去の解析により決定したいくつかの特徴的な台風事例について解析結果の再検討を行ったところ、事例間の解析結果の違いが想定していたよりも大きいことが明らかになった。このため計画にやや遅延が生じたが、より多くの事例を検討した上で再度解析を行い解決することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本年度に整備した研究開発環境や、取得を開始した人工衛星データを用いて物理パラメータの推定手法の研究をより本格的に進める。具体的には、台風時の人工衛星海上大気比湿の推定手法、および海面フラックスの推定手法についての研究を主に研究代表者が主導して行う予定である。また、台風時の 海上風ベクトルの推定についての研究を行う。その際に、GNSS反射波の観測に詳しい分担者を新たに加えて、研究を強化する予定である。さらに研究計画全体の中間的な成果物として、推定された物理パラメータを集約 し台風時の海面フラックスの中間データセットを典型的あるいは特徴的な2事例に限定する形で整備することを目指す。これらの一連の研究の進捗に応じて、 既存のデータや本研究で得られる新しい海面フラックスのデータ解析から、台風海洋相互作用について観測的な海面フラックスの観点から理解を深め、研究の進捗に応じて、他の研究計画から得られる数値シミュレーション結果等との比較を行う。
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