| 研究課題/領域番号 |
18H03744
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| 研究機関 | 立命館大学 |
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研究代表者 |
中川 毅 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (20332190)
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| 研究分担者 |
大森 貴之 東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (30748900)
山田 圭太郎 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 研究員 (30815494)
北場 育子 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (60631710)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | セルソーター / 放射性炭素年代測定 / 放射性炭素年代校正 / 化石花粉 / IntCal |
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| 研究実績の概要 |
2006年に採取された水月湖年縞堆積物のボーリング試料、いわゆる「SG06」のうち、1万6000年前から1万年前に相当する部分（全長およそ５メートル）から32層順を選び、セルソーターによる花粉抽出と、放射性炭素年代測定を実施した。抽出に際して、セルソーターから回収された化石花粉が静電気を帯びてしまい、遠心分離によって回収できなくなるという問題が発生したが、得られた分画を凍結乾燥することによって解決した。また、年縞試料をアルカリ処理後に水洗する過程で、従来よりも大量の化石花粉が流失していることが判明した（大型の遠沈管を用いているため、試料の表面積が大きくなることが原因と考えられる）。このため、水洗後の廃液をすべてメッシュによって濾過し、10マイクロメートルを越える粒子を回収するプロセスを新たに導入した。これにより、化石花粉の回収率は理論値の80～90パーセントになり、おおむね実用レベルに到達した。
微量の化石花粉の放射性炭素年代測定を実施するにあたり、グラファイト製のターゲットから安定したビームが得られない（そのため、十分な回数の繰り返し測定をおこなうことができない）ことは、データの品質を担保する上で大きな問題になっていた。この問題を抜本的に解決するため、鉄触媒の表面にグラファイトではなくセメンタイトを生成させる方法を新たに開発した。これにより、500マイクログラムの炭素からでも10回以上の安定した測定が可能になり、データの精度と確度が飛躍的に向上した（Radiocarbon会議で概要の発表をおこなった）。また、年代測定に必要な化石花粉の数も、100万粒から60万粒程度に減らすことができた。
花粉から得られた年代値を、葉化石から得られていた放射性炭素年代と比較した。その結果、化石花粉から得られる年代と葉化石から得られる年代は、完全に整合的であることが明らかとなった。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、４年間を通算しておよそ230点の花粉抽出と年代測定を実施することを計画している（本当は370点の測定をおこないたかったのだが、予算の充足率が7割にも満たなかったため、変更を余儀なくされた）。四年間でこの数字に到達するためには、初年度に50サンプル程度のデータは稼いでおきたかった。しかし、初年度は技術を「レールに乗せる」ことが主眼であり、分析の点数を稼ぐよりは、技術的な問題に対処し、安定したルーチンを確立することを重視したというのが実情である。そのため、データ数が単純に目標の7割弱に留まったからといって、「遅れている」と評価するのは、必ずしも適切なことではない。むしろいくつかの技術的なブレークスルーにより、おおむね今後の分析の支障がなくなったことの意義は大きい。また、セメンタイトをターゲットに用いた微量測定が可能になったため、必要な資料の量も少なくなり、抽出に必要な時間は大幅に短縮された。このため、プロジェクトの最終目標はひき続き達成可能であると予想している。
現状で残されている課題は大きく二つある。すなわち、１）ツガ・モミなどの大型の花粉を粉砕し、セルソーターに導入可能にすること、２）花粉生産量の少ない氷期最盛期において、大量のサンプルを処理して花粉を抽出する技術を確立することである。１）については、細胞に用いるホモジナイザーを応用することで、おおむね技術の突破口が見えつつある。細胞を粉砕する作業は多大な労力を必要とするが、空気圧を用いた自動処理装置の試作品も完成した。２）については、2018年中に広州大学の鄭卓博士を訪問して指導を仰ぐ予定であったが、都合が折り合わず不可能だった。2019年度中の訪問をめざして調整を始めている。
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| 今後の研究の推進方策 |
晩氷期から完新世初期については、2019年度も2018年度に続き、花粉の抽出と年代測定を進める（2019年度中に100サンプルの分析をめざす）。いっぽう晩氷期以前のもっと寒い時代については、１）花粉の含有量が少ない、２）代表的な花粉の粒径が大きく、そのままではセルソーターに導入できない、という二つの問題があり、2019年度中に解決する必要がある。
１）の問題を解決するため、広州大学の鄭卓（Zheng Zhuo）博士を訪問して指導を仰ぐ。鄭教授は長年、乾燥地の表層花粉を研究してきた実績があり、キログラム単位の資料から微量の花粉を濃縮する技術を持っている。幸い、水月湖の年縞堆積物の学術掘削は、これまでに4回実施され、試料は現在でも利用可能な状態にある（代表者が所属する立命館大学古気候学研究センターと、代表者が研究マネージャーを務める福井県年縞博物館がすべて管理している）。これらの試料から微量の花粉を抽出することで、花粉生産量の少ない寒い時代にまでデータセットを伸ばしていく。
２）の問題に対しては、細胞を粉砕するのに用いるホモジナイザーが有効であることがおおむね確認された。2019年度は、セルソーターに導入するのに適した粒径20～40マイクロメートルを達成するために必要なクリアランスと往復回数をつきとめ、大型花粉の抽出を軌道に乗せる。
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