研究課題/領域番号 |
18H03746
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
佐野 貴司 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, グループ長 (40329579)
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研究分担者 |
石川 晃 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20524507)
清水 健二 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 技術研究員 (30420491)
Tejada Maria・L・G 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球内部物質循環研究分野, 研究員 (40598778)
羽生 毅 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球内部物質循環研究分野, 主任研究員 (50359197)
中西 正男 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (80222165)
石塚 治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (90356444)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 火山 / マグマ / 大陸洪水玄武岩 / 巨大海台 / ホットスポット |
研究実績の概要 |
地球の歴史において最大のマグマ活動により形成された火山は大規模火成区(LIPs:Large Igneous Provinces)と呼ばれている。LIPsの形成案として「プルームモデル」が広く受け入れられている。地下深部から上昇してきたプルームの頭部が溶融してLIPsマグマをつくり,尾部の活動がホットスポット火山列を形成するという案である。しかし,これまでにプルームが存在する明白な証拠はLIPsの火山岩からは検出されていない。一方,プルーム尾部に起源を持つホットスポット火山列からはプルーム情報が得られる可能性が高い。そこでLIPsから続くホットスポット火山列の研究を開始した。主な対象地域は西太平洋のシャツキーLIPから東へと続く海山とアフリカのエチオピアに存在するアファールLIPから北側のエジプトまで分布する火山である。 平成30年度の調査地域は(1)西太平洋の応神海山列とパパニン海嶺,(2)シャツキーLIPから続くホットスポット火山列が現代も噴火活動を行っている南太平洋のフランス領ポリネシア諸島であった。(1)の調査にはドイツの調査船「ゾンネ(SONNE)」を用い,(2)の調査には,海洋研究開発機構(JAMSTEC)の調査船「みらい」を用いた。それぞれの航海では,海底地形データの取得と火山岩の採取を行った。採取した一部の火山岩については,記載や全岩化学組成分析を開始した。 また、今年度は初年度であるため、本研究の重要性を一般の方々に広く普及する試みも行った。具体的には、11月3-4日の日程で海底のLIPsに関する国際シンポジウムを国立科学博物館で行った。さらにLIPs、ホットスポット、プルームに関する複数の論文の公表や学会発表も行った。 なお,令和元年度に繰り越した費用は,11月のエジプト西砂漠に存在するバハレイヤ火山群での調査・岩石採集の旅費等に用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた応神海山列とパパニン海嶺での調査およびフランス領ポリネシアでの調査は共に順調に実施され、これら航海に必要な旅費や物品購入に本科研費の多くを使用した。一方、平成30年度当初はエジプトでの調査も予定していた。しかし、調査の協力を依頼していたカイロ大教授が別件の共同研究の事情により、急遽、調査に参加できないことになった。エジプト調査には、現地の地形・地質・言語のスキルを持つ当該研究者の参加が不可欠なため、日程調整の結果、令和元年11月に延期した。このエジプト調査旅費の一部は平成30年度から令和元年度に繰り越したものを使用し、無事に終了した。 エジプト調査は延期となったが、この調査に費やす予定だった時間を有効利用し、本年度に採取した岩石の記載や分析を行い、論文の執筆も行うこともできた。このため、今年度は初年度ではあるが、LIPs、ホットスポット、プルームに関する複数の論文公表や学会発表を行うことができた。 以上の研究成果を総合的に判断すると、本研究はおおむね順調に進展していると結論づけられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度はアフリカでの調査を開始する。調査地域は(1)エジプトのバハリヤ地域と(2)エチオピアのアファールLIP、の2カ所である。また、エチオピア調査に同行予定のアジスアベハ大学のアラヤ教授を国立科学博物館へ招へいし、本科研費研究の分担者と共にアファールLIP研究に関するミニシンポジウムを開催する。また、現地調査の打合せも行う。エジプトおよびエチオピアでの調査は本年度が最初となるので、本格的な調査はまだ行わず、それぞれ10日間程度の短期間で地質概況を知り、いくつかの火山岩を採取したい。エジプトのバハリヤ地域には5ヵ所以上の場所に火山岩が分布するようであるが、詳細な地質は不明なので、溶岩流の露出状況を確認する。エチオピアではアジスアベハ周辺に分布する漸新世のアファールLIP火山岩の層序を確認する。なお、エチオピア調査にはカイロ大学のカラフ教授も参加予定である。 前年度までに採取した岩石に関しては引き続き、記載や化学分析を行う。化学分析は蛍光X線分析装置(XRF)による全岩の主成分元素分析と誘導結合プラズマ質量分析装置(ICPMS)による微量元素分析を予定している。また、数試料を選出し、希ガス質量分析装置を用いた40Ar/39Ar年代測定も開始する。そして研究の成果を学術論文や学会発表により公表していく予定である。
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