研究課題/領域番号 |
18H03748
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 孝 北海道大学, 工学研究院, 教授 (30237408)
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研究分担者 |
戸田 裕之 九州大学, 工学研究院, 教授 (70293751)
藤村 奈央 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40732988)
竹内 晃久 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光・イメージング推進室, 主幹研究員 (70426526)
上杉 健太朗 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光・イメージング推進室, 主席研究員 (80344399)
古谷 佳之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, グループリーダー (60354255)
小熊 博幸 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主幹研究員 (80515122)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ギガサイクル疲労 / 内部起点型破壊 / 真空 / 放射光 / き裂伝搬 |
研究実績の概要 |
本研究では,4年間の研究期間の中で,①放射光X線顕微CT解析の高度化,②放射光X線顕微CT解析による内部き裂発生・進展プロセスの解明,③異なる真空環境における表面き裂発生・進展プロセスの解明,④Kitagawa diagramに基づく超高サイクル疲労強度評価法の構築,の4項目を実施する.昨年度は,主として①および②の準備を行なった.本年度は①を継続するとともに②,③に関する本格的な実験を開始した.具体的な実施内容を以下に示す. ①放射光X線顕微CT解析の高度化 昨年度に構築したイメージングシステムをTi-6Al-4Vの内部微小き裂の観察に適用し,投影型CT(解像度0.5μm/pixel)と位相コントラスト結像型CT(解像度65nm/pixel)を随時切り替えることで「試験片内に発生する内部き裂の探索⇒対象とするき裂の詳細観察」を効率よく行える手法を構築した. ②放射光X線顕微CT解析による内部き裂発生・進展プロセスの解明 ①で開発したシステムを用いてTi-6Al-4Vにおける内部き裂の初期進展過程を観察した.その結果,発生直後の数~数十μmの微小内部き裂の進展速度の計測に成功し, 10^(-13)~10^(-11) m/cycleという極めて低速な値であることを明らかにした. ③異なる真空環境における表面き裂発生・進展プロセスの解明 Ti-6Al-4Vを対象に種々の真空圧力の下で表面き裂の進展試験を行った結果,真空圧力が低くなるほどき裂進展速度は低下することがわかった.さらに,②で計測した内部き裂の進展速度は,10^(-4)~10^(-6)Paの真空圧力下のき裂進展速度とほぼ一致し,内部き裂内の環境は高真空レベルにあることが明らかとなった. 以上のように,本年度の取組みにより,今後の研究遂行に寄与する成果を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」に述べたように,本年度は,当初に計画していた実施項目を十分に遂行することができた.本研究では,これらに加えて, X線顕微CTイメージングと並行し,(1)内部き裂に特有な破面形成領域を分析すること,および(2)ビーチマーク法による内部き裂進展速度の計測・評価法を確立すること,という二つの試みを予定している. (1)については,Ti-6Al-4Vを対象として,大気および真空中で球面同士を接触させた状態で繰返し圧縮負荷を加える実験を行い,表面状態や表面直下の組織をEBSD解析やナノインデンテーション試験によって調べた.その結果,真空中で接触と分離を繰返す箇所に内部き裂と同様な微細な粒状領域が形成され,粒状の山部ならびに谷部では組織の微細化を生じることが確認された.また,(2)については,3年度目からの実施を予定していた鋼系材料に対し,10^11回のギガサイクル疲労試験を行うとともに,ビーチマーク法による寿命解析を実施した.その結果,内部き裂でも疲労限が存在すること,それが内部き裂の停留によると考えられることを明らかにした. 以上に加え,本年度は,(3)X線顕微CTイメージング中に試験片に繰返し負荷を加えるin-situ疲労試験機の開発も試みた.本試験機はピエゾ素子をアクチュエータとする小型軽量な仕様であり,放射光ビームライン上に直接設置することができる.実際にSPring-8のBL20XUにおいてトライアル観察を行った結果,in-situ疲労試験が可能なこと,内部き裂の開閉口挙動を実測できることなどが確認され,次年度以降の研究を発展させ得る実験技術を構築することができた. 以上(1)~(3)に示したように,現在までの進捗状況は,当初の計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」に述べた4項目のうち,2020年度は2019年度に引き続き,②放射光X線顕微CT解析による内部き裂発生・進展プロセスの解明,および③異なる真空環境における表面き裂発生・進展プロセスの解明,を実施する.前者については,2019年度に開発したin-situ疲労試験機を用いて,材料内部における微小き裂の発生・進展過程を詳しく調べるとともに,その開閉口挙動を計測し,表面き裂におけるそれとの違いを明らかにする.本年度はTi-6Al-4Vに加えて鋼系材料でもこの検討を始める.後者については,人工微小欠陥を付与した試験片を用いて,異なる真空圧力の下で疲労き裂進展試験を行い,き裂進展速度に及ぼす真空圧力の影響を調べる.Ti-6Al-4Vについては昨年度に完了したため,本年度は鋼系材料を対象に検討を進める.さらに,「現在までの進捗状況」で述べた2つの項目,すなわち,内部き裂に特有な破面形成領域の分析,ビーチマーク法による内部き裂進展速度の計測・評価法の確立,等を引き続き行う.以上の結果を総合することにより,内部き裂発生・進展プロセスの支配要因を考察し,2021年度の実験および解析に備える.
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