研究課題/領域番号 |
18H03750
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
安藤 泰久 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00344169)
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研究分担者 |
大花 継頼 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (10356660)
中野 美紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20415722)
三宅 晃司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (30302392)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多層膜 / 膜厚比 / 移着膜 / 比摩耗量 / 摩耗低減効果 / アモルファスカーボン |
研究実績の概要 |
2種類の金属多層膜からなる3次元ナノ構造を作製し、自己修復性固体潤滑膜の形成条件と摩耗に対する耐久性について検討を行った。多層膜として用いた金属材料はCrとAgで、それぞれの膜厚比を9:1、3:1、1:1とした基板に対して、鋼球、アルミナ、窒化ケイ素を用いて真空中で摩擦を行った。その結果、軟質金属であるAgがCrの上に乗り上げて移着膜を形成することで、0.2程度の摩擦係数が得られた。しかしながら、膜厚比を変えたことにより移着膜厚を変化させることを試みたものの、膜厚比の違いによる摩擦係数の差はほとんど確認出来なかった。同じ形状の基板にCrのみを成膜した試験片との比較においては、3次元ナノ構造の方が、平均的な硬さは低いにも係わらず、1桁程度低い比摩耗量を示すことを確認した。これは、Cr上の移着膜が、摩耗によって排除されにくく、その結果Crに加わる面圧を低下させ、摩耗を低減させたためであると考察した。このことから、3次元ナノ構造体は、摩耗を低減する機能を有していることを明らかにした。 アモルファスカーボンについては、単層膜を周期的傾斜構造上に成膜し、摩擦特性を調べた。大気中で測定した結果、平面上に成膜した基板と比較して、低い摩擦係数が得られた。これに関しては、膜厚の差が影響している可能性がある。一方で、真空中で摩擦した時には、膜の摩耗が顕著で、摩擦初期に摩擦係数が増加する様子が観察された。また、格子定数の差が摩擦力に与える影響を調べるために、Si単結晶を対象として基礎的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表面3次元ナノ構造の作製に関しては、固体潤滑材料としてAgを用いた基板については、膜厚の条件を変化させて複数種類を作製し、それぞれの摩擦摩耗特性を系統的に調べることができ、順調に研究が進展している。特に、摩耗特性については、軟質金属の移着膜の形成により、耐摩耗性が向上することが明らかになり、研究を進める上で新たな方向性を見出すことができ、予想以上の成果が得られた。 アモルファスカーボンについては、現状は単層膜の成膜にとどまっており、多層膜の成膜まで進めることが出来なかった点がマイナス要因となっている。 以上を総合的に勘案し、概ね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
表面3次元ナノ構造を用いた検討については、固体潤滑剤材料として軟質金属及びアモルファスカーボン(C)を用い、軟質金属等の移着膜が硬質金属上に形成されるとき、移着膜の厚さが変化したときに、摩擦係数がどのような影響を受けるかについて調査を行う。移着膜厚を変化させる方法としては、表面3次元ナノ構造に組み込まれている軟質金属あるいは固体潤滑材料の層の厚さと硬質金属層の厚さをそれぞれ変化させる予定である。また、摩擦係数に与える影響を検討する上では、移着膜の材質だけではなく、その下層にある硬質金属種の影響についても検討を進める。 境界潤滑特性に関する検討については、停止時間が静止摩擦に与える影響や摩擦によるナノスケール溝形成について調査を行う。そのさい、ナノスケール溝形成層の材質と潤滑油に含まれる添加剤との反応性について、添加剤の種類も変えて検討を進める。また、3次元ナノ構造を形成する金属層あるいは固体潤滑剤層の間で剥離が生じやすいと認められた場合には、固体潤滑剤や軟質金属を摩擦面に2次元的に分布させるための検討を行う。
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