研究課題/領域番号 |
18H03751
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梅原 徳次 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70203586)
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研究分担者 |
野老山 貴行 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20432247)
徳田 祐樹 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部表面・化学技術グループ, 副主任研究員 (30633515)
川口 雅弘 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部表面・化学技術グループ, 上席研究員 (40463054)
村島 基之 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70779389)
久保 百司 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90241538)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カーボン系硬質膜 / 摩擦面その場観察 / 誘電率 / ナノ構造層 / 潤滑油 |
研究実績の概要 |
本研究では,「カーボン系硬質膜摩擦時ナノ構造層・潤滑油層誘電率その場評価での超低摩擦指針の提案」を目的とする.このために、本年度は以下の3つの 項目を行った。 (1)「潤滑油中超低摩擦発現ナノ構造変化層と境界潤滑層の誘電率のその場評価装置の開発」(研究分担者:梅原、野老山、村島 ) 昨年度試作した「反射分光法を用いた潤滑油中超低摩擦発現ナノ構造変化層と境界潤滑層の誘電率のその場評価装置」を用いて、電子ビーム蒸着と窒素イオン照射を同時に行う複合成膜法でCNx膜を成膜し、摩擦特性とCNx膜の構造変化層と表面近傍のベース油の厚さと光学特性および摩擦特性の同時計測を行った。その結果、表面粗さの減少に伴う流体潤滑膜の荷重分担費の増加だけでなく、CNx膜の構造変化層の体積分極率が1.3倍増加し近傍のベース油の体積分極率が1.1倍増加し、誘起双極子由来のファンデルワールス力が1.4倍増加したことが試算された。このような定量的な試算がなされることは貴重な研究成果である。 (2)「カーボン系硬質膜の摩擦後のナノ構造層と吸着潤滑層のXPS分析」(研究分担者:野老山、川口、徳田) イオンビームミキシング法によるCNx膜においてPAO潤滑油中での摩擦実験を行い、CNx膜の摩擦後のナノ構造層をXPS分析し、C-Csp3結合の割合が光学定数から算出した値と同様であることを明らかにした。 (3)「量子化学分子動力学法シミュレーションによる摩擦によるカーボン系硬質膜と境界潤滑膜の誘電率と分極率の変化の可能性の実証」(研究分担者:村島、久保)カーボン系硬質膜の摩擦において炭化水素分子が放出されることを量子化学分子動力学シミュレーションで得た。得られた研究成果がScience Advanceに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の3つの項目における実験、分析及びシミュレーションともに、当初の計画通りに進んでいる。 (1)「潤滑油中超低摩擦発現ナノ構造変化層と境界潤滑層の誘電率のその場評価装置の開発」 CNx膜において、必要なデータが取得できた。 (2)「カーボン系硬質膜の摩擦後のナノ構造層と吸着潤滑層のXPS分析」 CNx膜において、摩擦面のナノ構造層のXPS分析が行われた。 (3)「量子化学分子動力学法シミュレーションによる摩擦によるカーボン系硬質膜と境界潤滑膜の誘電率と分極率の変化の可能性の実証 カーボン系硬質膜において、摩擦過程における分子相互作用がシミュレーションできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も当初の計画通り、以下の3つの項目における実験、分析及びシミュレーションを進めることで、摩擦面その場観察で計測されたナノ構造変化層と油膜の屈折率と消衰係数の値から、それぞれの比誘電率を求め、それらがカーボン系硬質膜による超低摩擦スマートサーフェスを安定制御するための革新的パラメーターである事を実証する。 (1)「潤滑油中超低摩擦発現ナノ構造変化層と境界潤滑層の誘電率のその場評価装置の開発」 異なるカーボン系硬質膜において実験を行い、本原理の普遍性を明らかにする。 (2)「カーボン系硬質膜の摩擦後のナノ構造層と吸着潤滑層のXPS分析」 異なるカーボン系硬質膜において、光学特性と結合構造の関係を明らかにする。 (3)「量子化学分子動力学法シミュレーションによる摩擦によるカーボン系硬質膜と境界潤滑膜の誘電率と分極率の変化の可能性の実証」 シミュレーションによりカーボン系硬質膜の構造と誘電率の関係を検討する。
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