研究課題/領域番号 |
18H03752
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松本 健郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30209639)
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研究分担者 |
前田 英次郎 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (20581614)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 形態形成 / 力学的適応 / ものづくり / 骨 |
研究実績の概要 |
A.組織に作用する力の分布を細胞レベルで明らかにする手法の開発:我々が別途開発したFRET型張力センサの遺伝子を電気パルスで培養細胞内に導入して細胞内部の張力変化を見積もることができるようになっている.しかし,組織に電気パルスを加えても内部細胞に遺伝子を導入することは殆どできない.そこで,組織をコラゲナーゼやエラスターゼに浸漬して結合を弱めた状態で導入する方法を試したが,やはり満足な導入は得られなかった.そこで発想を転換し,FRET型張力センサを導入した細胞を組織内に注入し,これをセンサとして用いる方法を思い付いた.今後この方法を試す. B.幼若骨組織の力学負荷下培養系の確立と最適構造の自発創生:孵化直後の鶏雛の幼若脛骨組織の薄切片を顕微鏡下で引張りながら培養したところ,引張によって石灰化が促進されること,引張に伴うひずみが小さい領域では,ひずみの大きさと石灰化速度に正の相関が見られたが,ある値を超えると両者には負の相関が見られるようになり,最も効率よく石灰化を進行させるひずみの大きさがあることが判った. C.珪藻の形態形成に及ぼす力学刺激の影響の検討:筒状の珪藻であるAulacoseiraの成長(軸方向への伸長)に伴う,軸方向の伸長力を計測する系の確立に成功した.伸長力は最低でも15μN程度であり,これが珪藻内部の圧力で作られているとすると,内圧は200kPa以上になることが判った.また,珪藻を様々な浸透圧の液中で培養した所,浸透圧が100kPa程度になると伸長が大きく阻害されることが判った.これらより,珪藻は浸透圧を利用して伸長している可能性が有ることが判った.また,超解像顕微鏡による被殻構造の観察を行う系を確立した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実施計画の内容を概ね達成することができ,また,上手く行かないことが判明した部分もあるが,新しい解決方法や課題の進め方を着想することで乗り越えていける可能性が見えてきたから.
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今後の研究の推進方策 |
A.組織に作用する力の分布を細胞レベルで明らかにする手法の開発:FRET型張力センサを導入した細胞を組織内に注入し,これをセンサとして用いる方法を思い付いた.今後この方法を試す. B.幼若骨組織の力学負荷下培養系の確立と最適構造の自発創生:培養組織の石灰化は順調に生じるようになったので,今後はコラーゲン線維の配向やタイプと石灰化の関係を調べる. C.珪藻の形態形成に及ぼす力学刺激の影響の検討:珪藻が軸方向に伸展するためには,被殻の一部を柔らかくして伸びる必要があるはずで,曲げモーメントや軸方向圧縮力が加わった状態でなぜその柔らかくなった部分が折れないのかという疑問に辿り着いた.この点を解明するため,被殻の構造や被殻形成過程の詳細を探る.
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