研究課題/領域番号 |
18H03755
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤田 修 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10183930)
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研究分担者 |
橋本 望 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (70392751)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 燃焼振動 / 予混合火炎 / 燃焼速度 / 音響モード / ガスタービン |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の3つの項目について研究を実施した。 (1)管内伝播火炎の燃焼振動に関する理論構築:伝播管内に音響定在波を仮定し、燃焼振動の増大機構を理論的に検討した。この検討にあたり、圧力couplingと速度couplingの2つの機構を考慮し、音響場の安定解析を行った。この結果、前者の機構では閉鎖端付近で圧力増幅率が大きくなり、後者の機構では管中央部付近で圧力増幅率が大きくなるが、実験結果と比較したところ、後者が圧力増幅の主要な機構であることが示された。また、系の圧力損失影響や、管の長さ、直径、等の影響にも検討を加えた。 (2)平面火炎の圧力変動に対する燃焼速度および伝播管形状影響:前年度構築した実験装置を用い、①管長、②管径、の影響を詳しく観察し(1)の理論との比較を行った。①については、管長を変えると音響振動周波数が変化し圧力増幅率が変化するが、とくに管を長くして混合気の燃焼速度を増加させると高次の音響振動モードが現れ、その振動モードに応じた火炎のセル構造が観察されることを見出した。また、この高次の音響モードに対応して生じる圧力増幅率分布は速度couplingを仮定した理論値と良く一致することが示された。②については、燃焼不安定性が極大となる管直径の存在することが実験的に示された。 (3)変形を与えた火炎の不安定性の観察:前年度レーザ加熱法を適用して、平面火炎に任意の変形を与えるシステムを構築したが、本年度はレーザビームを分岐し2つのセルを形成する手法を確立した。この結果、火炎のセル数およびセルとセルの間隔が圧力変動の増幅率に対する影響を観察することに成功した。例えば、照射するレーザ強度の総計を共通にした場合、単一セルの火炎に比べ2つのセルを形成した場合は圧力増幅率が大きくなり、セル形状と燃焼振動の不安性は対応関係にあることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画に沿って研究は順調に進展しており、その成果は国内外での種々の学会で発表された他、燃焼分野を代表する国際ジャーナルへ研究2年目の時点で4件の論文を公表することができている。また、全体計画の中で重要な部分を担う不安定現象の理論構築が大きく進展し、実験結果を理論と比較することで、例えば、高次の圧力振動モードや管の直径の影響(管が細い程速度couplingの効果が大きくなる一方で、管径が小さくなりすぎると壁面での音響エネルギー損失が増大する)が明らかになるなど、研究は順調に進捗している。一方前年度、研究計画を前倒しで進めたアンモニアを燃料としたときの燃焼振動に関する研究は、実験システムの構築と予備的なデータ取得までは進展しているが、実験データの再現性確保について試行錯誤している状況であり、来年度以降も継続して研究を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで研究はおおむね順調に進展しており、今後も計画に沿って実施していく。とくに3年目は、これまでにて完了していない実験条件についてデータ取得を行うほか、火炎面に生じるファラデー不安定性等を考慮した理論研究をさらに推進する。また、当初より3年目から本格化予定であった再生可能エネルギー由来の燃料を使用した場合の燃焼不安定性の研究を進展させる。また、得られた成果については、国内外での学会発表および学術論文として引き続き積極的に公表を行っていく。
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