本年度は、再生可能エネルギー由来の燃料として期待されるNH3に重点を置いた研究を進め、以下の3つの項目について成果を得た。 (1)管内伝播火炎の燃焼振動発生におよぼす代替燃料の混入割合の影響:再生可能エネルギー由来の燃料として期待されるNH3を選択し、その代替率と不安定性が発現する限界条件の関係を実験的に取得した。この結果、混合燃料(NH3とCH4の混合)中のNH3比率に対する不安定性の変化を特定の当量比について取得し、NH3の混合割合が増加すると燃焼振動の発生限界が拡大することを示した。また、この結果について考察を行い、NH3による燃料代替率が上昇するとルイス数が低下することが大きな影響を与えている可能性を指摘した。また、NH3を混入すると伝播管内で不安定性の増幅する火炎位置が変化するという結果が得られており、Pressure Couplingの不安定性への寄与を考慮する必要性を示した。 (2)平面火炎の圧力変動に対する不安定現象発現時の火炎構造の観察:従来から炭化水素燃料を対象として行ってきた、平面火炎に現れるParametric Instability発生時の詳細構造をNH3火炎を対象として観察し、炭化水素を燃料とした場合と比較を行った。この結果、火炎面に現れるセル構造の波数や発光強度の時間変化は両者で異なり、反応過程で生じる中間生成物(H2や活性化学種)を含めた拡散係数を考慮した不安定性の議論が必要であることを示した。 (3)変形を与えた火炎の不安定性の観察:これまでの研究で確立してきたレーザ照射法により、変形させた火炎の圧力変動の増幅率や不安定性の発生限界をNH3/C2H4混合燃料に対して調べた。この結果、火炎変形はNH3混合燃料の場合でも圧力増幅率を増加させ、Velocity couplingは依然として燃焼振動を発生させる重要な機構の一つであることが示された。また、純粋な炭化水素燃料と比較すると(1)でも述べたとおりNH3の混入が不安定性を増加させるという結果が得られた。
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