研究課題/領域番号 |
18H03764
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
川村 貞夫 立命館大学, 理工学部, 教授 (20186141)
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研究分担者 |
田實 佳郎 関西大学, システム理工学部, 教授 (00282236)
河村 晃宏 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (60706555)
坂上 憲光 東海大学, 海洋学部, 准教授 (20373102)
堤 治 立命館大学, 生命科学部, 教授 (00313370)
植村 充典 立命館大学, 理工学部, 准教授 (00512443)
岡田 志麻 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40551560)
和田 晃 立命館大学, 理工学部, 助教 (60802121)
Zhu Mingzhu 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (50806180) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インフレータブル構造 / ロボットアーム / 非線形粘弾性解析 / 可変粘弾性機構 / マッサージシステム / 高分子センサ |
研究実績の概要 |
高分子の薄膜を用いたインフレータブル(以下IF)構造によって,ロボットのアクチュエータやリンクなどの構造材を実現し,空気圧駆動を利用すれば,極軽量・柔軟ロボットが実現できる.このIF構造ロボットは,従来の金属材料の高重量/高剛性のロボットでは達成困難な作業への利用拡大が強く期待される.しかし,現状の報告では個別のハード実現と駆動方法の確認に留まり,十分な制御性能は無い.この理由は,IF構造の設計法・解析法が十分でない,IF構造アクチュエータ/センサの適切な選定や実現法が不明確,IF構造のシステム設計論が無いなどが挙げられる.本研究では,これらの問題を解決するために,①IF構造の解析/設計/モデリング手法提案②IF構造用センサ・アクチュエータ設計製作③応用 機器開発によるシステム設計論の実証を実施している.現在までの研究実績は以下である. ①IF構造の解析/設計/モデリング手法提案: 多数の質点群モデルにより,IF構造のシミュレーション法を開発した.計算量の削減などFEMよりもIF構造に適した方法となっている.一般の粘弾性モデルを含めて,非線形特性をモデル化可能な解析法を繰り返し学習制御と時間軸変換に基づき提案した. ②IF構造用センサ・アクチュエータ設計製作: 液晶を利用して弾性材料の応力を可視化できる構造の解析と実装をおこなった.ポリウレタンとポリ乳酸を利用して,弾性材料のセンサの設計と精度の検証を実施した.粘性制御可能なプリ―ツ構造のIFアクチュエータを開発して特性を示した. ③応用機器開発によるシステム設計論実証: 拮抗型アクチュエータの基準圧制御によって,関節剛性を変化できるIFロボットアームを実現した.粘性制御可能な3自由度IFロボットアームの性能を実験的に示した.リンパ浮腫マッサージなどを目的として,IF構造のセンサ/アクチュエータシステムを開発して性能を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)IF構造の数理モデル構築とILC/時間軸変換法による動特性解析法の確立:変形のモデル化を行った.その結果から,伸縮が大きくできる折り込み構造を示した.また,ILC/時間軸変換に基づく粘弾性体の同定法として非線形性を考慮できる方法を提案し,基本的な性能を実験により確認した. (2)IF構造の多質点バネモデルによる高速計算法の確立:シミュレーションによる複雑な形状や接触の表現を実現した.有限要素法よりも計算が容易で,簡単にIF構造をシミュレーション可能であり,IF構造の形状設計に利用可能である. (3)IF構造リンク/アクチュエータ/受動要素の設計法の提案:振動抑制可能な新しいアクチュエータを提案した.各関節の粘性を速度信号のフィードバックによって実現した.この粘性可変な関節を利用した3自由度程度のアームの設計法を提案した. (4)IF構造に適したセンサの選択と開発:液晶利用の柔軟センサでは,応力を可視化できる原理を実験的に確認し,センサとして性能を向上させた.ポリウレタンセンサでは,変位センサとして安定的に計測可能であることを多くの実験結果から示した.ポリ乳酸センサは,瞬間的なせん断力計測が可能であることを明らかにした. (5)IF構造ロボットシステムの設計法と運動制御法の確立:リンパ浮腫マッサージなどの目的で,法線力と接線力の多軸計測可能なIFセンサを開発し,性能を実験によって評価した.IF構造の可変形状ベッドの概念を提案し,基本特性を確認するための試作機を用いて実験を行った.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年は以下の項目を実施する. (1)ILC/時間軸変換法による非線形動特性解析法の確立: 粘弾性体の解析に令和元年に提案したILC/時間軸変換法を用いた方法は,非線形の対象にも適用可能となる.ただし,昨年度の実験結果からパラメータ推定が困難な時間区間が明らかとなった.そこで,理論的によりロバストな手法の検討を行うと共に実験精度を高めて,本提案手法を確立する.粘弾性としてマックスウエルモデルとフォークトモデルを対象としてきたが,より複雑なモデルとして,実際の多様な粘弾性体に適用可能な理論構築と実験により有用性確認を行う. (2)IF構造リンク/アクチュエータ/受動要素の設計法の提案: 振動抑制可能な新しいリンク構造を実現する.さらに,3自由度程度のIFアームとIFエンドエフェクタを実現する.そのロボットアームを利用して,対象物の把持,ピックアンドプレイス作業,衝撃接触作業などの実験を実施して,IF構造の有用性を実証する.IFリンクとIFアクチュエータの構造的接続には,保守管理など実用上の問題を考慮した方法を開発する.実利用の一つとして遠隔操縦システムを構築して,IFロボットアームの制御を実現する. (3)IF構造システム構築と実利用の検証: 開発したIF構造による多軸センサを利用して,IF構造のマッサージシステムを構築する.IF構造のアクチュエータとセンサにより,軽量,柔軟のリンパ浮腫マッサージシステムの開発を目的とする.実際の利用を想定するために,神戸大学医学部との共同研究を加速する.IF構造を利用して,人の姿勢保持や移動を可能とする形状可変ベッドを実現する.IF構造は他の方法に比して質量を極端に小さくできることがメリットであるので,装着型のセンサやアクチュエータに適している.そこで,手指の形状を前腕に取り付けたIF構造物により筋肉の変化から手指形状を推定する方法を提案する
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