研究課題/領域番号 |
18H03766
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
品田 賢宏 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (30329099)
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研究分担者 |
谷井 孝至 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339708)
大矢 剛嗣 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30432066)
河野 行雄 中央大学, 理工学部, 教授 (90334250)
井上 耕治 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50344718)
清水 康雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, NIMS特別研究員 (40581963) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 決定論的ドーピング法 / 量子物性制御 / 量子物性制御デバイス / 確率的情報処理回路・システム / 量子計測 |
研究実績の概要 |
①決定論的ドーピング法の多元化と量子機能の発現:1)新たな液体金属イオン源を開発し、質量分離可能な集束イオンビーム装置およびシングルイオン注入装置に搭載することで、決定的ドーピング法の多元化を進めた。ガスイオン源の搭載による軽元素の注入可能性については、現有装置への搭載が不可能であったことから、特にシリコンやダイヤモンドのバンドギャップ中に不純物準位を形成する液体金属イオン源を開発することによる代替法の構築を行った。2)シリコン中に不純物を注入し、深い不純物準位の形成とその室温特性を利用した量子輸送特性評価を行った。また、シングルイオン注入法を用いて、シリコン中に希土類元素を注入し、その内殻電子の励起・緩和を活用した単一光子源の開発を進めた。ダイヤモンド中のNVセンターの活用では、NVセンターと他の電子スピンとの磁気的結合を活用した量子ビットの形成と応用を目指している。 ②単一ドーパント量子ドットを用いたTHz波検出器の開発と量子コヒーレント制御:ドーパントへのテラヘルツ集光効率向上のための更なる光電界集中構造の検討を、シミュレーションと実験の両面から行った。誘電率を適切に設定することで、光電界サイズの局限化に成功した。また、テラヘルツ波検出に対するドーパント分布の効果について考察を行い、ドーパント同士の距離を制御することで、 検出帯域をチューニングできる可能性を示した。 ③単一ドーパント量子物性制御デバイスの回路実装:単一ドーパント情報処理回路向けのシミュレータ作成を進めた。単一ドーパント量子系に発現する現象・動作を表現するシミュレータの開発を進めると同時に、同回路に実装する具体的な自然・生物的情報処理アーキテクチャの設計、及び試作中のシミュレータにてその動作確認を進め、それらの有用性を確認し、国際会議等で成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 ①決定論的ドーピング法の多元化と量子機能の発現 1) 昨年度には、希土類元素として、これまでのErに加え、CeおよびGdを含む液体イオン源の開発を行い、シングルイオン注入装置に搭載してイオン注入可能であることを実験的に確認した。 2) シリコン中に注入されたGeが形成するGeV欠陥の電子状態に関する理論的解析を進め、シングルイオン注入を用いて作製した、シリコンMOSトランジスタのチャネル中のGeの1次元配列形成の量子的電子輸送特性と比較検討し、その成果をAdvanced Functional Materials誌で発表した。シリコンへのEr注入おいてSiナノ構造中のErからのフォトルミネッセンス特性評価を継続して行った。ナノ構造形成のためのドライエッチングによるダメージが背景光をもたらすことが実験的に明らかとなったため、昨年度には、ナノ構造形成をドライエッチングからウェットエッチングに改良したプロセスを試した。しかしながら、Erの発光を増大させる酸素の共添加が、ウェットエッチングのマスクとなるSiO2膜のエッチング耐性を低下させることが判明し、この問題を解決できるプロセスを構築した。 ②単一ドーパント量子ドットを用いたTHz波検出器の開発と量子コヒーレント制御:センシングの領域がテラヘルツ波の波長よりもはるかに小さいため、光電界集中構造の最適化は重要な課題である。今年度見出した構造はこの課題解決に資するため、大きな知見となる。また、ドーパント分布がテラヘルツ検出の性能に関わることは制御性の点で重要な情報である。 ③単一ドーパント量子物性制御デバイスの回路実装:単一ドーパント回路を基盤とするリザーバコンピューティング系情報処理システム(ニューラルネットワーク系)や雑音利用系システムの構築と、その挙動を表現するシミュレータの構築が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
①決定論的ドーピング法の多元化と量子機能の発現 1) 決定的ドーピング法の多元化:ガスイオン源の搭載による軽元素の注入可能性については、軽元素を吸蔵できる金属を用いて液体金属イオン源とすることで、その代替法の構築を目指す。 2) 決定的ドーピング法による単一量子準位系の形成:ナノ構造を用いたシリコン中Erの発光強度増大について、2021年度にナノ構造形成における問題点を解決できるプロセスを構築したので、そのプロセスを用いて継続的にフォトルミネッセンス特性評価を行う。2021年度に開発したGdを含む液体金属イオン源やそれまでに開発済みの希土類元素を含む液体金属イオン源を、シングルイオン注入装置を用いてダイヤモンド中に打ち込むことで、NVセンターと希土類元素の内殻電子との磁気的結合を活用した量子ビットの形成と応用を目指す。 ②単一ドーパント量子ドットを用いたTHz波検出器の開発と量子コヒーレント制御:昨年度までに得られた知見を元に、ドーパント量子デバイスのテラヘルツ応答の 観測を行い検出性能を評価する。 ③単一ドーパント量子物性制御デバイスの回路実装:引き続き、世界初となる単一ドーパント情報処理システム用の回路シミュレータの完成を目指す。また、単一ドーパント回路用自然・生物的情報処理システムの構築、特にリザーバコンピューティング系や雑音利用系のシステム構築の検討を進める。
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