1. SiC界面パッシベーション技術として,NOアニールなど界面にN原子を選択的に導入するためのアニールが効果的であるとされるが,N原子密度を高めるための指針は不明確であった。そこで僅かにO2を共存させたN2雰囲気中でのSiC表面反応の動力学的解析を行ったところ,共存するO2が起こす酸化反応によって表面のNを脱離させる一方で,~Pa程度の僅かに加えたO2による酸化がN導入反応を加速させるため,両者のバランスがN濃度の飽和挙動を決めることが判明した。O2分圧を抑え,酸化速度を抑制しつつ遅い窒化反応を長時間進めると高いN原子密度が実現することが判明した。 2. SiC MOS界面パッシベーションは,主としてSiC伝導帯端付近のエネルギーの準位について評価されてきた一方で,ミッドギャップ近傍の深い準位および価電子帯近傍の準位についての検討例は少ない。本研究ではミッドギャップ近傍の深い準位の評価手法として,分光器を通した単色光の照射によってトラップ電荷を励起させたときの応答を調べる手法を開発,伝導帯および価電子帯から1eV以上の深いエネルギー領域に,時定数の遅い準位が高密度に存在し,これが水蒸気アニール等によって効果的に低減されることを見出した。またp型基板を用いた素子の特性から,水蒸気アニールは価電子帯近傍の欠陥準位低減に対しても有効にはたらくことを実証した。 3. 高耐圧用途のパワーMOSFETには高い閾値電圧が必要であるが,そのためにチャネル領域中のドープ濃度を高めるとチャネル移動度の大幅な低減をもたらしてしまう。そこでチャネルドーピングに頼らずに閾値で夏を向上させる技術として,ゲートスタック中のダイポール効果を利用できることを実証した。これはゲート絶縁膜をAl2O3/SiO2積層膜とすることでその界面にダイポール層が発生して電位を変調する操作である。
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