研究課題/領域番号 |
18H03772
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 正和 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90323534)
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研究分担者 |
佐藤 正寛 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (40805769)
藤井 克司 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (80444016)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光触媒 / 半導体 / バンドアラインメント |
研究実績の概要 |
溶液の溶存酸素制御など安定した測定を可能にする手法を確立し,光アノードとしてヘテロエピタキシャル成長によるGaN,単結晶基板であるTiO2およびSrTiO3について,光誘起OCPの振る舞いを相互比較した.本手法は太陽電池分野ではsuns-Voc法と呼ばれ,電極等の直列抵抗の効果を除去して,半導体のダイオード係数(光励起キャリアがすべて発光再結合すればn=1,すべて非発光再結合すればn=2)を求めることができる.9桁も光強度を変化させた解析は本研究が初めてである.STOでは,光強度がごく弱い領域以外は一貫してn=1.1が得られており,本材料は欠陥が少ない高品位な結晶であることがわかる.一方,TiO2では,光強度が弱い領域ではOCPが溶液のレドックス電位もしくは電極表面近傍の欠陥準位にピニングされ,ついでn=2の領域が現れ,さらに大きな光強度下ではn=1.1程度で傾きが安定した.このように,照射光強度の増大につれて,OCPのピニング,非発光再結合が主体のn=2,発光再結合が主体のn=1の順に遷移する現象は,半導体と金属のショットキー接合によくみられるものであり,光励起キャリアによってピニングの起源である準位やバンドギャップ中心付近の非発光再結合中心が占有されてキャリアの再結合中心として働かなくなることによるものである.以上のように,単結晶基板を用いたSTO,TiO2光アノードは典型的な半導体接合の性質を備えていることが明確になった.一方で,GaNは光強度3桁以上にわたりOCPがピニングされており,光起電力を得にくい材料であることがわかった.また,ピニングが解けた後の光強度増大に伴うOCPの急激な変化は,ダイオード係数nとしては2を遥かに超えるものであり,欠陥準位あるいは電解液のレドックス電位によるOCPのピニングに関連することが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R1年度に計画していたSTOおよびTiO2光アノードの解析に関しては順調に進捗し.「研究実績の概要」に記した成果を得ることができた. また,R1年度から繰り越した表面修飾の効果を検証する観察装置については,水素発生助触媒として用いられるPtを材料に選定し,n型GaNおよびn型STO光アノード表面に修飾した際に,適切な電位のもとでは酸素と水素が同時に発生することを確認した.この結果をもとに,Ptをくし形電極としてGaNおよびSTO表面に形成した新規構造を考案し,助触媒であるPtの電位と基板の電位を光照射下で同時測定することによりバンドアラインメントを解析するという見通しを得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
上記の構想に基づき研究を遂行し,助触媒を含めたバンドアラインメントを解明する.
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