研究課題/領域番号 |
18H03780
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
太田 淳 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (80304161)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CMOSイメージセンサ / 蛍光計測 / 光刺激 / オプトジェネティクス / 脳深部埋植 |
研究実績の概要 |
初年度は,これまで開発を行ってきたマウス脳内埋植フォトニックデバイスを用いて,脳深部に位置する縫線核,扁桃体へのデバイス埋植を行った.特に縫線核は極めて埋植が難しい位置であるため,ターゲット領域への埋植が正確かつ低損傷で実現できる方式を開発した. また,行動実験との併用を想定したマウス行動観察システムとフォトニックデバイス計測系との連携が行えるシステムの開発を行った.本システムを用いて,今後マウスの行動と神経活動レベルとの関連付けを可能とする有用なツールとなることが期待される.本システムを用いて,GCaMP発現遺伝子改変マウスの視床下部外側野(LH:lateral hypothalamus),弓状核(arcuate nucleus)にデバイスを埋植して,摂食行動とこれらの領域における神経活動との関連性を確認することができた. また今年度は蛍光計測用として,ドーパミン神経用DAT-Cre,アセチルコリン神経用ChAT-Cre遺伝子可変マウスの導入し系統維持を進めた.またAAV注入によるChR2発現を可能とする実験系整備も行い,実際にChR2発現を確認し,更に光刺激が可能なことも確認できている. 今年度は分散埋植デバイスの高性能化をスタートさせた.デバイスの機能として,蛍光計測だけでなく細胞外活動電位計測などの機能をワンチップに集積化することを検討した.細胞外活動電位計測には神経アンプの集積化が必要となり,今年度は神経活動アンプの基本設計を行い,TEGの設計試作までを実施した.これらのLSI設計にはVDEC(東京大学大規模集積化システム教育研究センター)よりライセンス供与されたCADを用い,LSI試作はTSMC等のファンダリーサービスを利用し,0.35um 標準CMOSプロセスを用いた.ポストプロセス,アセンブリは既存設備を利用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究項目である(1)分散埋植デバイス高性能化,と(2)神経ネットワーク回路計測・制御について,各々一定の成果をえることができた.具体的には(1)については神経アンプのデバイス集積化に関するシミュレーション・設計・試作を実施し,(2)については,縫線核や扁桃体等脳深部へのデバイス埋植を行い,また行動実験との連携システムの開発も行った.さらにAAV注入によるChR2発現にも成功し,光刺激を確認した.以上によりおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は以下の研究項目を実施する. (1) 分散埋植デバイス高性能化:デバイスの低侵襲化を引き続き行うことと,既に実現しているレーザリフトオフ法によるLEDの薄膜化(厚さ約10um)とCMOSイメージセンサとの一体化技術を元に,超小型デバイスの試作を実施する. (2) 神経ネットワーク回路計測・制御:前年度に引き続き扁桃体など複数部位への埋植を行い,光刺激と光計測によりネットワーク回路として特性評価を実施する.
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