研究課題/領域番号 |
18H03782
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 健司 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (50202263)
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研究分担者 |
中野 幸二 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10180324)
冨浦 洋一 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (10217523)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 匂いイメージセンサ / 匂い分子ホスト分子 / プロファイル分解 / センサアレイ / ピクセル化匂いセンサ |
研究実績の概要 |
匂いホスト分子開発のために,マイクロ波加熱法による効率の良い固相ペプチド合成と,光架橋反応を利用した補欠分子族の再構成反応を組み合わせることで,マイクロペルオキシダーゼ11の完全合成に世界で初めて成功した.リガンド依存性イオンチャネルの特徴を模倣し,トランスデューサーへの固定化が可能な26量体ペプチドがバニロイド選択的なホスト分子として作用することを見い出した. 匂いイメージセンサのピクセルを構成する個々のガスセンサ(サブピクセル)に用いる分子認識材料として蛍光色素と分子鋳型構造を持つゾルゲル材料,および光成長技術により作製したAu/Agコアシェル構造を用い,プラズモニック金属ナノ粒子とカップリングさせ,FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を原理とした,匂い分子選択性を持つ匂い物質応答性を持つサブピクセル構造・材料を開発した.匂い可視化センサデバイスに関しては開発したセンサ機能性材料をサブピクセル構造として集積化した2次元匂い可視化デバイスをマスクレス露光技術により作製に成功した. k個の匂い痕跡の2次元上の濃度の分布と単位濃度の各匂い痕跡を匂いピクセル化アレイセンサで測定したときの出力をランダムに設定し,これを合成することで,2次元上に配置した匂いアレイセンサによる測定結果のデータを作成し,このデータを非負値行列因子分解によりプロファイル分解することで,元の各匂い痕跡の濃度分布と匂いアレイセンサによる出力を推定できるかのシミュレーションを行った.設定した匂い痕跡の数を与えた場合は,正確に元の濃度分布とアレイセンサの出力を推定できることを確認した.また,ピクセル化匂い可視化デバイスで実際に計測された応答のプロファイル分解に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
匂い分子を検知するホスト分子開発の基礎研究,高速な金属ナノ粒子のLSPR(局在プラズモン共鳴)を用いた匂いイメージング基板,色素や分子鋳型法による分子選択性の付与や高機能・高感度化,匂い応答のプロファイル分解に関する基礎的な画像処理技術など当初の予定通り進捗している.匂い検知イメージングデバイスについては,ピクセル化金属ナノ粒子アレイ(プラズモニックセンサアレイ)と色素カップリング,分子鋳型層に集中し,開発を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
匂い痕跡画像計測とその応用展開,匂い痕跡画像が持つ物理的・化学的な情報の発見を目指し,匂い分子検知層,イメージング層,画像解析層について研究を推進する. まず,匂い分子のホスト化合物に関してはバニロイド選択的ホスト分子を電気化学的、あるいは分光学的な情報変換機能を組み込むために,人工リガンドと蛍光性カーボン量子ドットとコンジュゲート化し,バイオセンシング・バイオイメージング法を開拓する. デバイス・計測システム開発と可視化フィルム開発と匂い空間情報測定については開発するセンサ機能性材料をサブピクセル構造として集積化した2次元匂い可視化デバイスを作製する.初年度の成果として得られたマスクレス露光技術と金属ナノ粒子光成長技術を組み合わせ,高密度なピクセル構造を作製する.得られた可視化デバイスを用い,匂い分子選択吸着特性解析,フィルムのLSPR(局在プラズモン共鳴),SERS(表面増強ラマン散乱)を組み合わせた超高感度分子指紋測定,およびハイパースペクトル計測によりセンサ画素の分子応答の基礎解析を行う. 要素臭プロファイル分解については,組み合わせ最適化による匂い応答画像の要素臭プロファイル分解,分子認識特性解析研究を行い,匂い可視化デバイスの混合臭応答の要素分解と要素臭応答プロファイルの基本特性を解析する.応答プロファイルの要素臭プロファイルへの分解はNMF(非負値行列因子分解),トピック解析などの手法により実施する.さらに,可視化された物理形状と分解形状の画像解析を実施し,匂い画像の理解につなげる.プロファイル分解に関しては,情報量規準や補正済み決定係数などの尺度を利用して,匂い痕跡数を推定する手法を確立する.また,2次元上に配置した各匂いアレイセンサの性質のばらつきを補正する技術を開発するために,シミュレーションにより,アレイセンサのばらつきと,推定精度の関係を求める.
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