研究課題/領域番号 |
18H03783
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩熊 成卓 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (30176531)
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研究分担者 |
川越 明史 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (40315396)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 航空機 / 電気推進 / 超伝導 / 回転機 / モータ / 発電機 / ケーブル |
研究実績の概要 |
本研究では、超伝導回転機(発電機、電動機)、インバータ、三相超伝導ケーブル、冷熱を提供する極低温液体燃料と熱交換して超伝導部材を運転温度に維持する冷却システムから成る航空機電気推進システムを開発する。まず小型・軽量な超伝導回転機の概念設計を目指す。120-200人乗りの1通路ナローボディ相当の航空機を想定して全推力は20MWとし、これを複数の発電機、電動機で担わせる。超伝導線材は、高電流密度特性により鉄の飽和磁束密度以上の高磁界を容易に発生でき、回転機の無鉄心化を可能にし、常電導機と比較して圧倒的な小型・軽量化をもたらす。回転機は、二次元磁気双極子モーメントが磁界中で回転トルクを受ける、電機子巻線に三相交流を通電することにより大きさ一定、定速の回転磁界が発生する、と言う原理原則に立ち返り、これまでの鉄と銅線で構成された回転機の設計理論・経験則から脱却し、全超伝導回転機の設計指針について検討する。また、燃料にLH2、LNGを選定することにより、燃料の冷熱を回転機の冷却に活用し、電機子は絶縁耐力と冷却能力の観点からサブクール液体窒素(65K)もしくは液体水素(20K)浸漬冷却とし、回転界磁子はヘリウムもしくは水素ガスの密閉空間で自らの回転によりガス冷却され、このガスは電機子容器の内壁により冷却される構造とする。 初年度は、まず最先端の高Jc、低交流損失REBCO超伝導テープ線材の臨界電流Ic(B,T,θ)、交流損失Q(B,T,θ)特性を温度T=25K-77K、磁場B=0-5Tの領域で実測し、また独自に考案したREBCO薄膜テープ線材の低交流損失化・大電流容量化の手法を適用した超伝導導体の電磁特性を評価した。これに基づき、ギャップ磁束密度Bg、動作温度Top、電動機個数・回転数をパラメータとして、全超伝導同期機の重量、交流損失(発熱)、必要超伝導線材長等のパラメータ依存性を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、まず、最先端の高Jc、低交流損失REBCO超伝導テープ線材の臨界電流Ic(B,T,θ)、交流損失Q(B,T,θ)特性について、温度T=25K-77K、磁場B=0-5Tの領域で実測により評価した。また独自に考案したREBCO薄膜テープ線材の低交流損失化・大電流容量化の手法を適用した超伝導導体の電磁特性についても理論・実験により評価した。これに基づき、ギャップ磁束密度Bg、動作温度Top、電動機個数・回転数をパラメータとして、全超伝導同期機(発電機、モータ)を概念設計し、JMAGによる数値解析により、巻線磁界分布、回転機特性、さらに、重量、交流損失(発熱)、必要超伝導線材長等のパラメータ依存性をも調べつつある。まだ、途中段階ではあるが、全超伝導同期機単体では20kW/kg以上の出力密度を得ており、電気推進システム全体でも現行のターボファンジェットエンジンの5-6kW/kg以上の出力密度を算出している。さらに、効率も98%以上となっている。これらの数値は、具体的な高温超伝導線材の電磁特性の測定結果、および、これまでのサブクール液体窒素・ヘリウムガス冷却に関する知見に基づいており、確度は高く、今後の研究展開により航空機用電気推進システムの実現に大きな期待を抱かせる結果となっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、初年度に引き続き、まずは航空機用全超伝導発電機・電動機の最適構造を数値解析による特性評価を通じて探っていく。また、冷却システムにおける熱的・エネルギー収支面についての考察、インバータにおける発熱量、ケーブルの交流損失および侵入熱についての考察を経て、電気推進システムの構成について検討を進める。さらに、航空機用電気推進システムの概念設計を行い、重量、サイズ、効率、出力密度等を明らかにしていく。
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