研究課題/領域番号 |
18H03787
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
高橋 有紀子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, グループリーダー (50421392)
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研究分担者 |
葛西 伸哉 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, グループリーダー (20378855)
磯上 慎二 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主任研究員 (10586853)
山路 俊樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (30432355)
王 建 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 若手国際研究センター, ICYS研究員 (80792069)
杉本 聡志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 研究員 (90812610)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 垂直磁化膜 / 磁化反転 |
研究実績の概要 |
本研究では、1~10 nmの垂直磁化膜において外部からのアシストエネルギーを効率よく磁化反転に結び付けることを目的としている。そのために、超高速分光技術を用いた磁化の動的評価手法を駆使して各種エネルギーアシストによる磁化の動的挙動を明らかにし、その知見を材料選択および超薄膜ヘテロ構造の設計へフィードバックする。ここでは、バルク磁気異方性の高い材料、界面誘導磁気異方性による垂直磁化膜、新規垂直異方性材料の3つの材料系について、フェムト秒レーザーを用いた超高速分光法により磁化の動的挙動を解明し、クリティカルダンピングを実現するための材料パラメータを計算により導き出す。本年度は、次の3つの項目について以下の結果を得た。(1)磁化の時間分解測定:熱アシスト磁化反転においてキュリー点付近での磁化挙動を理解するためには高温でのダンピングの見積もりが必要となる。そのために、電磁石のギャップの間に光学測定用の窓付高温真空チャンバーを設置した。その結果700Kまでの温度での測定が可能となり、一般的な強磁性金属での磁化ダイナミクス測定に成功した。(2)測定系の構築:電流・電圧印加状態で測定を可能にするために顕微時間分解磁気光学Kerr効果(TRMOKE)測定装置の立ち上げを行い、一般的な強磁性金属であるパーマロイおよびホイスラー合金での磁化ダイナミクス測定に成功した。(3)エネルギーアシスト磁化反転:円偏光アシストによる磁化反転では、GdFeCo/Ru/CoPt多層膜において、0.31 erg/cm2以上の交換結合において磁化反転がアシストされることが明らかになった。また、CoPt単相膜ではシングルパルスでの磁化反転割合は10%程度であるが、交換結合を利用することにより62%にまで増加することが明らかになった。また、計算ではGdFeCoの元素分解の磁化の時間発展について計算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度予定していた検討項目はほぼ終わった。交換結合を利用することによる円偏光誘起磁化反転のエンハンスメントの定量評価を行い、エンハンスされるための閾値を求めた。一般的な強磁性材料ではあるが、磁化反転量の定量的な見積もり手法を確立できたことにより、ターゲットとするFePtの評価へと研究を進めることができる。また、顕微TRMOKEの立ち上げを行い微小領域での光学測定が行えるようになった。次年度以降の電気的測定手法の開発に予定通り進める。このように、次年度以降予定している研究内容に問題なく移ることができるため、おおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)磁化の時間分解測定:昨年度までに、光学窓付高温真空チャンバーを用いて、真空中で加熱しながら磁化ダイナミクスの測定が可能になった。今後は、磁気デバイス上重要な垂直磁化膜であるFePt、FeCo、CoFeB膜の測定を行い、高温での磁化ダイナミクスを明らかにする。これらの材料はいずれも動作温度が室温以上である。本高温TRMOKEは電磁石を使っており、高温チャンバーを入れるために広めにギャップをとっていることから、印可磁場に制限がある。印可磁場が不足することが予想されるため、7 Tの強磁場印加が可能である超伝導マグネットを用いた高温TRMOKEの立ち上げも行う。 (2)測定系の構築:微小領域の磁化ダイナミクス測定を可能にする顕微TRMOKEを用いて、電流・電圧印加しながら磁化ダイナミクスを測定することにより、その変調の様子を電気的な検出方法で明らかにする。MRAM用のCoFeB垂直膜は、電流及び電圧を印加することで磁化反転を行うことから、MgO/CoFeB垂直磁化膜をホール素子に加工したものをサンプルとして用いる。 (3)エネルギーアシスト磁化反転:交換結合を用いた円偏光誘起磁化反転では、材料をCoPtからFePtへと変える。FePtは(001)配向させる必要があるので、MgO(001)単結晶基板/FePt/Ru/GdFeCoという膜構成とする。第一段階としてFePt連続膜で交換結合による磁化反転アシスト効果を検証したのちに、FePtグラニュラー薄膜でのシングルパルスでの磁化反転を目指す。
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