研究課題/領域番号 |
18H03789
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 克輝 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10292054)
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研究分担者 |
西村 紳一郎 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (00183898)
山村 寛 中央大学, 理工学部, 准教授 (40515334)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膜ファウリング / バイオポリマー / 浄水処理 / ファウリングポテンシャル |
研究実績の概要 |
表流水中有機物の中で僅かな割合を占める高分子量親水性有機物(バイオポリマー)が、表流水の膜ろ過処理において主な膜ファウリング発生成分であることが明らかになっている。関連する研究のほとんどで、バイオポリマーは分子量1万ダルトン以上の分子量を有する成分として一括して扱われているが、バイオポリマーは様々な成分の混合物であることが確実視される。本研究では一括して扱われてきたバイオポリマーを細分化して、膜ファウリング発生において真に重要となるバイオポリマー成分を特定することを目指している。本年度はLC-OCDの改良により可能となったバイオポリマーのサイズに基づく細分化を適用し、巨大バイオポリマー(分子量100万ダルトン以上)がMF膜のファウリングを発生させる一方で、UF膜のファウリングについては分子量100万ダルトン未満のバイオポリマーが主な原因となっていることを究明した。バイオポリマーの濃縮・精製を大容量で行うための方法開発も行い、精製バイオポリマーの回収率と純度を上げるために精製過程におけるイオンバランスの調整が必要であることを見出した。精製バイオポリマーを異なる細孔径を有するMF/UF膜で疑似クロスフローろ過し、これまで一括して得られるのみであったバイオポリマーを4つのサイズ画分に分離して得ることに成功した。これら4つのサイズ画分の膜ファウリング発生ポテンシャルをPVDF膜を用いたろ過実験またはQCM-Dにより評価することが可能になっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大量の表流水(数百L )からバイオポリマーを回収・精製するために分画分子量1万程度のUF膜を用いたクロスフローろ過を用いたが、想定していなかった低回収率と低純度の問題が発生した。この問題を、回収作業時にイオンバランスを調整した蒸留水を添加する方法を開発することで解決した。当初想定していなかった時間が必要となったが、このことは新規の重要な研究領域創成に繋がると考えている。バイオポリマーの精製と、これをサイズに基づいて分画し、膜ファウリングポテンシャルを別個に評価することに成功した。研究成果を重要な国際学会において発表し、大きな反響を得た。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までにバイオポリマーの回収精製を十分なレベルで行うこと、バイオポリマーのサイズに基づく分画、分画したバイオポリマーの膜ファウリングポテンシャルを評価することが可能になっている。今年度はバイオポリマーの入手先を広く求め、河川ごとにバイオポリマーの膜ファウリング発生ポテンシャルが異なるのか、同一河川においてバイオポリマーの膜ファウリング発生ポテンシャルは変化するのか、膜材質を変化させた際に膜ファウリングの発生ポテンシャルはどのような応答があるのかを検討する。前年度に見出したイオンバランスの調整によるバイオポリマーの回収率と純度の向上は、バイオポリマーの重要な特性を反映している可能性があり、この点についても検討を行う。
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