研究課題/領域番号 |
18H03790
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松下 拓 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30283401)
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研究分担者 |
松井 佳彦 北海道大学, 工学研究院, 教授 (00173790)
白崎 伸隆 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (60604692)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 土木環境システム / ウイルス / 浄水処理 |
研究実績の概要 |
昨年度までの検討で、ノロウイルス外套タンパク粒子(VLPs)の構造を還元剤を添加することによりいったん崩壊させた(電子顕微鏡で確認)後、外来DNA共存下で塩化カルシウムを添加することにより、VLPsを再合成させると同時に(電子顕微鏡で確認)、外来DNAをVLPsに封入(ELISAとPCRにより確認)することに成功した。しかしながら、外来遺伝子の封入率が著しく低く、このような遺伝子封入VLPsを用いても、計画当初の目標であった「低濃度ノロウイルスの浄水処理性の評価」が困難であると判断され、外来DNAとVLPsの親和性を高める必要があることが分かった。そこで本年度は、同じノロウイルス属のマウスノロウイルスを実験室で培養してRNAを抽出し、VLPsへの封入を試みたが、封入率の増加には至らなかった。今後、金ナノ粒子に外来DNAを修飾し、金ナノ粒子とともにVLPsへ封入する手法を試みる予定である(金ナノ粒子が既に封入できることは確認済み)。 一方、昨年度までに確立したナノセラム陽電荷膜法による大量濃縮(ウイルス濃度は極めて低いため濃縮が不可欠)により、札幌近郊の2つの膜ろ過浄水場(いずれも凝集-MF膜ろ過)にて、トウガラシ微斑ウイルス(PMMoV)の浄水処理工程での濃度変化をそれぞれ複数回調査した。その結果、PMMoVの除去率は、それぞれ0.7~1.5 log以上, 1.3~2.9 log以上であることが分かった。この値は、昨年度までに調査した、通常の浄水処理で行われる凝集-沈澱-砂ろ過処理(1~2 log)と概ね同程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの検討にて、ノロウイルスVLPsを用いたDNA封入VLPsの作製に成功し、さらなる封入率の向上に向けて、DNA修飾した金ナノ粒子が有効であるとの方向性を導き出せ、次年度へ繋がる成果を出すことができた。 また、「浄水場でのPMMoV調査」についても継続してデータを蓄積しており、昨年度までの凝集-沈澱-砂ろ過処理に加え、凝集-MF膜処理でのウイルの除去性についての知見が蓄積されてきた。 以上より、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
DNA封入VLPsの作製に関しては、DNAを修飾した金ナノ粒子(既に金ナノ粒子がVLPsに封入できることは実験的に確認している)を用いることにより、DNAの封入率を大幅に高め、室内浄水処理実験を行いたい。 一方、実浄水場におけるPMMoVの処理性調査に関しては、季節変動や経年変化を調べるため、近郊浄水場での調査を継続するとともに、他地域の浄水場における調査も継続して行いたいと考えている。また、PMMoV以外に、水系ヒト感染性ウイルスについても知見の集積を試みたい。
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