研究課題/領域番号 |
18H03794
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芳村 圭 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50376638)
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研究分担者 |
植村 立 琉球大学, 理学部, 准教授 (00580143)
平野 淳平 帝京大学, 文学部, 准教授 (80567503)
三好 建正 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, チームリーダー (90646209)
市野 美夏 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 特任助教 (40376968)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ミレニアム大気再解析 / データ同化 / 同位体大循環モデル / 歴史天候データ / 同位体プロキシ |
研究実績の概要 |
長期間に及ぶ過去の気候変動を捉えることは、将来の気候予測の精度を向上させるために重要である。しかし、過去の気候変動の解析に必要な長期間に及ぶ気候データは十分に存在しない。観測データは現実に即しているが対象期間や地域が限定的であり、モデル値は時空間を隙間なく埋めることはできるが現実の気候場を完全には再現できない。そこで、観測値とモデル値から実際の状態を推定し、時空間的に均質で統計的に最適な値を得られるデータ同化を気候復元に取り入れた。 その結果、850~2000年において、Okazaki and Yoshimura (2017)の手法に基づきプロキシの酸素同位体比を直接同化することで、地上気温などの他の気候要素の年々変動を再現できることを示した。この結果はIsoMIROCとIsoGSMの両方の場合で確認された。利用する気候モデルにかかわらず同様の結果を得られる可能性が高く、今回のデータ同化手法による気候復元の信頼性は高い。 また、本研究の気候復元により実際の変動を再現することができるのかを1971~2000年におけるエルニーニョ現象に注目し、検証した。気象庁のJRA55とIsoMIROC、IsoGSMを用いた各結果を年地上気温偏差について比較し、過去のエルニーニョ現象を再現できる可能性を示した。また、用いるプロキシを限定した実験からサンゴ殻がエルニーニョ現象の再現に重要であることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算機移設時の故障による新規計算ノード調達の時期がずれ、繰り越すことになったが、大規模計算を避ける実験を行うことなどにより、研究の進捗自体には大きな影響を及ぼすことなくすすめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
<同位体地球システムモデル開発及び観測-モデル融合(芳村)>データ同化する際のフォワードシミュレーションモデルの開発を行う。特に、気候情報などに換算する前の、観測された同位体比を直接データ同化できるようにするために、同位体地球システムモデル及びセルロースやサンゴ・石筍の同位体比を推定するための同位体プロキシシステムモデル群の開発に着手する。 <データ同化スキーム開発(三好)>時空間平均的な観測データをデータ同化し、シミュレーションにフィードバックするオンラインデータ同化手法の開発を継続する。時空間積算観測量を同化する新たなデータ同化手法について、Lorenzの40変数モデルなどの低次元理想化モデルを使って試行し、理解を深める。また、実際の大気モデルに適用し、手法の確立に向けた研究を進める。 <古文書収集及び古天気解析(平野)>引き続き古天気情報を収集し、アナログ情報である天気データをデータ同化システムに投入しやすい形式に変換する。特に、日記に記録されている「雪」「雨」に関する情報を定量化する手法について検討を進める。 <同位体プロキシ分析及び古気候解析(植村)>引き続きアイスコアや鍾乳石の同位体比を始めとした様々な古気候データを収集する。同位体地球システムモデルの開発と連携し、過去1000年間の同位体データの解釈も進める。 <古天気データ整備(市野)>古天気データをデータ同化システムへ投入するためのデータ整備を行う。そのための古天気資料の情報共有システムの構築と、収集された古天気情報のデータ構造化手法およびワークフローの開発を行う。
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