研究課題/領域番号 |
18H03795
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
堀 宗朗 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門, 部門長 (00219205)
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研究分担者 |
本山 紘希 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), システム工学群, 講師 (00732281)
澤田 昌孝 一般財団法人電力中央研究所, 地球工学研究所, 上席研究員 (80371417)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地震応答解析 / 大規模数値計算 / 解析モデル自動構築 / 不確定性定量化 |
研究実績の概要 |
本研究での具体的作業は,1)超大規模解析モデルの地震応答解析,2)超多数解析モデルのモデル構築と地震応答解析,3)二つの地震応答解析を基にした妥当性確認の方法論の考案,に分けられる. 第一の作業に関して,本年度は,超大規模解析モデルの改良を継続した.構築済みの自由度1,000万の解析モデルに対し,適切な構造要素を導入し,自由度を下げながら,解析精度を逆に上げるような,ハイブリッド解析モデルの構築が可能であることを検討した.この検討に基づき,曲梁・シェルの理論を再構築し,高精度の構造要素の定式化・開発に着手した.昨年度に改良された,有限要素法のソルバの性能を活かし,高速計算の実行も続けた.MPCの利用も含め,改良されたソルバの有効性を検証することも実施した. 第二の作業に関して,本年度は,構造物の超多数解析モデルを使った数値解析の実施を試行した.なお,規模は小さいものの,超多数解析モデルもハイブリッド解析モデルであるため,上述の改良されたソルバの有効性も検証した.また,超多数解析モデルの解析結果は,解析モデルの数に比例して増大するため,適切に間引くことが必要となる.昨年に引き続き,適切な間引き方を検討した.部材と部材の接合部の取り扱いの高度化を検討した.超多数解析モデルを使う利点として,接合部の不安定な接触挙動に対し,決定論的な評価に代わる確率的な評価を試みた. 第三の作業に関しては,着想中の主応力座標系を利用した構造物地震応答の効果的な可視化の実用化を検討した.昨年度,主応力が作る流線を可視化することに成功したが,これを一歩進め,流線から座標系の可視化に発展させた.主応力座標系を正しく関数として離散化することで,流線に代わる座標関数の支配方程式を導出することに成功した.これは,線の代わりに,座標が一定値となる面が決定できることを意味する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開発を続けている,超大規模ハイブリッド解析モデルは,実用にも適した合理的な解析モデルである.ソリッド要素は複雑な形状の物体に柔軟に適用できるものの,高精度の計算には多数の要素が必要となる.一方,構造要素は,特定の形状の物体にしか適用できないものの,少数の要素で高精度の計算ができる.構造要素とソリッド要素の長所を活かし,短所を補う,ハイブリッド解析モデルが構築できるようになり,さらに,その改良を進めていることは,良好な進捗と判断している. ハイブリッド解析モデルに対しても,超多数解析モデルが構築できるようになり,かつ,開発されたソルバを適用することで十分な計算の高速化が達成できたことも,良好な進捗である.本研究課題の目的である解析モデルの妥当性確認を達成する上で,超多数解析モデルの高速計算(短時間計算)の実現は重要である. 昨年度に引き続き,数値解析の収束の確認と,地震応答に大きく寄与する不確定性の特定を進めている.この二点は,地震応答解析に供する解析モデルの妥当性を検証する上での必須の要件である.数値解析の収束の確認は,逆に,数値解析の数値誤差を定量的に示すことにも繋がる.定量的な数値誤差の評価に基づき,要素寸法や時間刻みが設定できることは実用上も重要であると判断している. 以上,3つの研究作業は概ね順調に進捗している.本研究課題の目的である解析モデルの妥当性を確認する方法論の骨子も,概ね完成している.骨子は,1) 設定された要素寸法と時間刻みを持つ解析モデルの数値誤差を明示し,ついで,2) 確定が難しい接合部等での不確定性が地震応答に及ぼす影響を定量的に示す,というものである.1)と2)では,適切に自動構築される,超大規模ハイブリッド解析モデルと超多数解析ハイブリッド解析モデルが利用されることになる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は,昨年度以来,概ね順調に進捗している.このため,現時点で,当初の研究計画を変更・修正する必要はないと判断している.高性能計算の利用を前提に,超大規模ハイブリッド解析モデルと超多数解析モデルを使う地震応答解析の数値実験を継続することを予定している.今年度,第2階層のスーパーコンピュータと位置付けられている海洋研究開発機構の第4世代地球シミュレータを利用した.次年度,さらに,利用を拡大し,効果的な数値実験を実施ることになる.. 超大規模ハイブリッド解析モデルと超多数ハイブリッド解析モデルを構築する際,解析モデルの不備が判定できる手法の開発も必要となっていた.昨年度,開発した主応力座標系を流線として可視化するプログラムを利用し,不備判定にも適用している.今年度は,これを一歩進め,主応力座標をより合理的に可視化する理論を構築した.この理論は,主応力座標を直交座標の関数として設定するもので,主応力座標が一定値を取る面を可視化することができる.主応力の線はこの面の上を流れることになり,より容易に,解析モデルの不備を見つけることができるようになる. 以上,来年度が最終年度となる,本研究課題は,当初の計画にそって推進する予定である.最終的な成果も形になりつつある.なお,昨年度と本年度の研究で新たに取り組んだ,解析モデルの不備の判定に関して,主応力座標を利用した副次的な成果も得られた.直交座標を前提とした従来の数値解析とは一線を画す可能性がある,直交曲線座標系を利用する数値解析の理論の考案とプログラムの開発にも着手する予定である.
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