研究課題/領域番号 |
18H03797
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
勝見 武 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (60233764)
|
研究分担者 |
遠藤 和人 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部, 室長 (10353533)
高井 敦史 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30598347)
保高 徹生 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (60610417)
肴倉 宏史 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 室長 (70331973)
乾 徹 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90324706)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 自然由来 / 重金属 / 吸着 / 地盤汚染 / 緩衝作用 / 不溶化 |
研究実績の概要 |
2020年度は、3つのサブテーマについて、2019年度に開始した長期影響評価試験を継続し、成果の取りまとめに向けた検討も行った。 サブテーマ(1)「土構造物中の重金属等の挙動に関する考察」では、継続して土構造物中の重金属等の挙動について検討を進め、特に、土構造物に用いられる地盤材料の状態を考慮した室内試験を実施し、重金属等の溶出挙動を評価した。実環境での降雨を再現した散水型の不飽和カラム試験を長期間にわたり継続したことや、地温の変化や嫌気条件下での溶出試験手法を提案したことが、掘削土が置かれる現場に着目した独創的かつ主要な成果として挙げられる。特に、嫌気的な雰囲気を保持したまま溶出試験を行うためには、溶出試験を行う容器の封を密にするだけでなく、容器の壁面の空気の透過を抑制する必要性を示したことは、重要な成果と言える。 サブテーマ(2)「環境化学と地盤力学・施工学に基づく原地盤や吸着層の緩衝能の評価」では、人工的に設けられる吸着層や原地盤の緩衝能を環境化学と地盤力学・施工学の観点から評価することにより、合理的な対策工法・設計手法に資する検討を行った。カラム通水試験を、重金属等を含む溶液を通水吸着試験を実施した後に蒸留水を通水する脱着試験を実施することで、吸着層に固定化される重金属等を評価できることを提案した。2019年までの研究で、自然由来重金属等の溶出濃度は通水に伴って徐々に低下する場合が明らかになっており、吸着層に流入する浸透水の濃度が小さくなった場合でも、吸着層に重金属等が固定化される必要性を明らかにした点で、設計に資する重要な成果が得られたと言える。 サブテーマ(3)「Sustainable Soil Management (SSM)の概念に基づく地盤環境基準の提案」について、2018年からの3年間で得られた成果に基づいて、各種マニュアルの取りまとめを開始できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
建設工事などで発生する自然由来重金属等汚染土の合理的な対応を実現するため、(1) 重金属等の土構造物中での挙動に関する基礎データの蓄積(特にカラム式の溶出試験の実施)、(2) 吸着層や原地盤の緩衝能の環境化学と地盤力学・施工学の観点からの評価による設計手法の確立(特に吸着層に添加する吸着材の配合設計)、(3) 低濃度汚染土の活用を可能とする地盤環境基準の提示、を目的としている。2020年度はこのうち(1)、(2)について2019年度に開始した試験をさらに継続して実施する計画であり、各サブテーマの進捗は概ね計画どおりで、順調に進展していると判断できる。サブテーマ(3)についても、各種法制度やマニュアル作成に資する成果をあげられており、全体としての進捗は問題なく順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度も、上記の3つのサブテーマに分けて継続的に研究を進める。 サブテーマ(1)「土構造物中の重金属等の挙動に関する考察」では継続して室内実験を中心とした検討を行い、盛土材として用いられる状態を考慮した溶出試験の試料調整方法の確立を図るとともに、土構造物の環境化学特性を考慮した溶出特性の評価を行う。また蓄積したカラム試験の時間ー濃度プロファイルに基づいて、重金属等の溶出特性を分類し、重金属等の種類に応じた、対策工の提案を行う。 サブテーマ(2)「環境化学と地盤力学・施工学に基づく原地盤や吸着層の緩衝能の評価」では、前年度の実施内容を補完すべく要素試験とモデル試験の結果を踏まえたモデル化を行い、吸着層材料の強度変形特性を明らかにする。ゼオライト、酸化マグネシウム・カルシウム系吸着材などを対象材料とし、粒度や土との混合割合、母材の種類による影響等を検討する。さらにその結果を受け、盛土層・吸着層・原地盤の水分保持特性を考慮した緩衝能の評価を継続して実施する。 サブテーマ(3)「Sustainable Soil Management (SSM)の概念に基づく地盤環境基準の提案」では、吸着層の不均質性や不確実性も考慮しつつ「有害物質を含む土を使ってもよい」とする制度の構築を目指す。4年分の研究成果を取りまとめ、各種マニュアルの実装を進める。
|