研究課題/領域番号 |
18H03800
|
研究機関 | 国立研究開発法人土木研究所 |
研究代表者 |
小池 俊雄 国立研究開発法人土木研究所, 土木研究所(水災害・リスクマネジメント国際センター), センター長 (30178173)
|
研究分担者 |
澤田 洋平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30784475)
浅沼 順 筑波大学, 生命環境系, 教授 (40293261)
瀬戸 里枝 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (70799436)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マイクロ波リモートセンシング / データ同化 / 水循環モデル / 洪水 / 渇水 |
研究実績の概要 |
本研究では、豪雨の局所的発生域の予測機能向上および陸域の統合的な水文モデルの開発を踏まえ、衛星搭載マイクロ波センサと統合的水文モデルの統合化研究を進め、その成果を効果的に用いた渇水時の農作支援情報を創出する。 衛星搭載マイクロ波放射計による雲観測において、雲底からの下向き放射の陸面での反射成分も陸面での土壌水分によって影響を受けるため高周波数(89GHz)の利用かつ雲水量の大きな雲が対象であれば陸の影響はそれほど大きくはないこと、および、低周波数(36GHz)のばあいは陸面の影響が大きいため陸面放射の推定も同時に行う必要があることを、理論的に導き出し、地上マイクロ波放射計を用いた観測研究によって実証した。また、地上分解能の粗いマイクロ波放射計の弱点を補填するために、合成開口レーダによる高分解能初期値推定とマイクロ波放射計による陸面データ同化手法を組み合わせたダウンスケーリング手法を開発した。この2件の研究成果は3編の国内外誌に発表された。 本研究では統合的水文モデルとして、大気モデルと結合して大気-陸面間の水・エネルギー収支を物理的に計算できる分布型水文モデル(WEB-DHM)と、河川流出と流域の氾濫を表現できる降水-流出-氾濫モデル(RRI)とを結合したWEB-RRIを新たに開発し、渇水~洪水氾濫までをシームレスに表現できるモデルを新たに開発して、国際誌にその研究成果を発表した。 北アフリカ、ブラジル北東域において、農業渇水被害を算定するために、本研究では陸面-植生結合データ同化システム(CLVDAS)を用いた農業的モニタリングおよび季節予測手法開発を行った。また後者においては、CLVDASの出力値である葉面積指数(LAI)の偏差を用いることにより、その年の穀物生産量と目標収穫量を得るために必要となる灌漑水量を推定する手法を開発し、2編の国内外誌にその研究成果を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究2年目となる今年度は、本研究の中核となる衛星利用手法並びに水文モデルの開発において飛躍的な進歩を遂げた。前者では衛星搭載マイクロ波放射計による陸域での雲観測の可能性を示し、またマイクロ波放射計と合成開口レーダ、データ同化を組み合わせた高区間分解能システムの開発を成し遂げた。後者においては、渇水~洪水までの水災害全般をシームレスに表現できる水文モデルの開発に成功した。さらに統合的手法の現地への適用により社会的に有用な情報を提供するシステム開発を行い、いずれも査読付きの国際、国内誌に成果を発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では理論的考察をもとに衛星観測手法やモデル開発を進めるとともに、大渇水に見舞われてきたブラジル東北部への適用を中心に現地適用研究を進め、躍進的な成果を得ている。そこで今後は、大気における降水過程のデータ同化手法による降雨予測手法の高度化と、農業渇水に対応できる営農を支援する情報の提供手法を開発し、国内はもとより世界各国へ適用可能な手法開発の基礎的研究を推進する。
|