研究課題/領域番号 |
18H03806
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堀 賀貴 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (20294655)
|
研究分担者 |
西山 要一 奈良大学, その他部局等, 名誉教授 (00090936)
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
豊田 浩志 上智大学, 文学部, 教授 (20112162)
池口 守 久留米大学, 文学部, 准教授 (20469399)
佐々木 淑美 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 研究員 (60637883)
佐々木 健 京都大学, 法学研究科, 教授 (70437185)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | レーザースキャニング / 写真測量 / ポンペイ / オスティア / ヘルクラネウム / 港湾ネットワーク / 道路行政 / CORONA衛星画像 |
研究実績の概要 |
概ね計画通り研究を遂行した。新規に導入したレーザースキャナーにより,これまでにない精度で遺跡を3次元化できることを確認(論文として発表)。加えて,高解像度のデジタルカメラを応用した写真測量についてICPアルゴリズムを使って,スキャンデータと写真測量から生成された点群データをマッチングさせることが可能となった。タスク別実績,0)点群データ収集の完了:ポンペイ,ヘルクラネウムでスキャニング写真測量を行った。オスティア全域の約70%を完了,順調に実測を進めている。なお,当初ドローンによる空撮を想定していたが、法規等の状況を鑑み、少なくとも年度内の実施は困難という理解に至った。1)ヴォールト施工技術の解明:ドーム構造については,ヘルクラネウムにおいて,コーベル型ではないドーム(従来の図面とは形状が違う)が郊外浴場で確認され,大きな発見となった。2)ローマ法による建築規制:オスティア・アンティカ遺跡を訪れ、道路の構造と都市配置との関係を再検討した。同時に、河川交通からの接続を考慮した倉庫街の位置関係に注目し、居住法の分析に着手した。3)ポルトゥスの新都市開発:地中海の港湾ネットワークを想定し,その中で各港湾が果たした機能や位置づけを考察。4)室内環境シミュレーション:オスティア「ミューズのインスラ」のモザイクの写真測量とスキャンデータのマッチング,および赤外線,紫外線による写真撮影を行った。5)ビッグデータ構築:初年度の調査においては,予測した以上に壁画などの劣化が確認され,ビッグデータに壁画情報もあわせて蓄積できないかを検討した。 これらの成果を3月10日(京都)と17日(東京)で国際シンポジウムを開催した。オックフォード大学ジャネット・ディレーンディレクター,マッコーリー大学レイ・ローレンス教授,他エヴァン・プラウドフッド博士が講演,2018年度の研究実績について一般公開した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下のタスクにおいて,計画以上の大きな成果が認められる。1)ヴォールト施工技術の解明においてコーベル型ではないドーム(従来の図面とは形状が違う)が郊外浴場で確認され,大きな発見となった。3)ポルトゥスに加えてケントゥムケッラエ,アンティウム,プテオリなどの港湾を実地調査したほか,文献史料の収集も進めることができた。ポルトゥスとオスティアについては,国際学会への出席を通じて最新の成果を吸収したほか,獣骨データも収集してポンペイやヘルクラネウムの実態と比較するなど,日常生活との関係性も視野に入れつつある。4)室内環境シミュレーション:オスティア「ミューズのインスラ」のモザイクの写真測量とスキャンデータのマッチングが可能となった。加えて,および赤外線,紫外線による写真撮影が実現した。5)ビッグデータ構築:過去のデータや赤外線,紫外線などの画像情報を取り込んだ,いわゆる4次元を視野に入れたビッグデータの構築が実現しつつある。さらに,国際シンポジウムの開催によって,これらの成果が国際的にも認められつつあることが確認され,今後の国際共同研究への発展の可能性が現実味を帯びつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
オスティア:2019年度はオスティア遺跡公園と九州大学の包括的研究協力協定の最終年度であり,協定に含まれる期間延長を実現するとともに,2019年度内に90%以上の3次元データ化を完了する。その上で,UAVによる地形データ取得に変えて,2018年に新たに,色彩分析のための機器を導入し,遺跡ビッグデータにより精度の高い色彩情報を付加すべく準備を進めている。加えて、赤外線写真、紫外線写真、赤色・青色・緑色・黄色のフィルターによる写真,あるいは蛍光X線分析機による組成成分分析などの情報を加え,ビッグデータのコンテンツを充実させるとともに,精度を向上させていく。VR技術により遺跡の可視化を通じて,オスティア遺跡公園との研究協力体制を強化するとともに,オックスフォード大学やマッコーリー大学との研究協力も推進し,成果の公開に努める。さらに,現時点で70%完了した遺跡ビッグデータを活用して,研究計画のタスクに対応し,さらに深化,具体化させた以下のテーマの研究を開始し,研究実績のさらなる上積みを図る。 加えて,ビッグデータに時間軸を加えるため,なるべく解像度の高い(かつ周辺の開発が進行する以前の)空間情報として、周辺におけるRAF等の過去の航空写真の有無を確認し、もし入手可能であればオルソ画像として整備する。またポルトゥスについては,多数の沈没船が発掘されたピサの港湾遺跡は,遺物の修復期間を経て2018年中に再公開される予定であったが,延期の状態が続いている。このため研究計画に影響を受けているが,遺跡が公開され次第,調査を実施するとともに,タラキナなど他の港湾都市も考察対象として含める予定である。英国が進めるポルトゥス・プロジェクトとも可能な限り連携を試みたい。2年目には成果の発信にも注力し国際学会への参加を積極的に進める。とくにローマ法研究の最新情報を得て、世界水準の論文を準備する。
|
備考 |
(1)の点群データを閲覧するためには,ブラウザはFireFoxまたはChromeを推奨。Explorerは不可
|