研究課題/領域番号 |
18H03808
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
柳 宇 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (50370945)
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研究分担者 |
金 勲 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (00454033)
諏訪 好英 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10416836)
鍵 直樹 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (20345383)
東 賢一 近畿大学, 医学部, 准教授 (80469246)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 建築環境 / 空調システム / 菌叢解析 / マイコトキシン / MVOC / 環境改善策 |
研究実績の概要 |
当初計画段階より進んでいる。具体的に下記に示す通りである。①文献調査に関しては,分担研究者の東より,微生物汚染と居住者の健康影響の関連性について,国内・海外の文献調査とレビューを行った。また,微生物によるヒトの健康への影響に関する既存の量・反応関係のモデルをレビューし,次年度の詳細な検討のための情報を得た。 ②研究代表者柳は,ダクトを有する中央方式,タスク・アンビエント空調,クールピットを有する空調システム内の諸表面(ダクト,加湿器,フィルタ,コイルなど)に付着するマイクロバイオーム(細菌・真菌・ウイルスを含む)のサンプリング法を確立した。2018年夏期に実施したクールピットのDNA解析結果と2017年夏期に行った同様な予備研究の結果を比較したところ、竣工1年間が経過した時点での菌叢が変わっていることが明らかになった。また、タスク・アンビエント空調におけるマイクロバイオームの測定結果、床下チャンバ―内から多種の細菌が発生していることが明らかになった。現在、クールピットにおける冬期に採取した試料と他のサンプル(ダクト内堆積微生物など)に対する次世代シーケンサーによるDNAの解析を行っている。さらに,空調システム内微生物に関する簡易評価法(蛍光染色)の準備を完了し,次年度実環境での評価を行う予定である。 ③研究分担者金は,諸空調システム内エンドトキシン試料を採取し,エンドトキシンの解析を行った。その結果は上記のDNA解析の結果と整合している点を高く評価できる。 ④研究分担者鍵は,空調システムから採取した真菌から発生するMVOCの解析を行った。また,空調システム内のMVOCとほかの環境中のMVOCの比較を行った。 ⑤分担研究者諏訪らは,管路内における結露状況の長期予測を目的としたシミュレーションモデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①文献調査に関しては,分担研究者の東より,国内・海外の文献調査とレビューを行ったのみならず、リスク評価手法を取り入れらることが分かった。 ②研究代表者柳は,中央方式ダクト5系統,タスク・アンビエント空調式,クールピットを有する空調システム,代表的なオフィスビルに備えられている中方式空調2系統内の諸表面(ダクト表面,フィルタ表面,コイル表面,空調機加湿器エレメント表面など)に付着する微生物のDNAの抽出に成功した。また、これまで細菌のDNA解析プロトコルを確立したが、今年度では真菌の解析プロトコルをほぼ確立した。また,蛍光顕微鏡を用いた空調システム内付着する微生物に関する簡易評価法について、蛍光顕微鏡用試薬の検討を行い、有効な試薬を定めることができた。 ③研究分担者金は,柳と一緒に上述した空調システム内のエンドトキシン試料を採取し,エンドトキシンの解析を行ったほか、その結果とDNAの解析結果が整合していることが分かった。 ④研究分担者鍵は,柳と一緒に上述した空調システムから採取した真菌から発生するMVOCの解析を行ったのみならず、諸環境の比較を行い、空調システムにおけるMVOCの特徴を明らかにした。 ⑤分担研究者諏訪らは,近年採用例が増えている外気負荷削減するためのクールピット表面の温湿度解析のモデルを構築した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,昨年の研究結果を踏まえて,下記の通りに実施する予定である。 ①微生物と居住者の健康影響に関して,ターゲット菌を定め,リスク評価モデルを検討したうえで,量・反応関係のモデルを構築し、評価を試みる(担当:東賢一)。②夏期と冬期における空調システム内空中と表面に付着するマイクロバイオーム(細菌・真菌・ウイルスを含む)の試料採取と次世代シーケンサーによる解析を行う。また、空調システム内付着微生物の簡易測定法(蛍光法を利用)の実証を行う(担当: 柳宇)。③夏期と冬期における空調システム内空中と表面に付着するエンドトキシンの採集・分析を行い,エンドトキシン濃度・量とグラム陰性菌のリード数との量的な関連性について分析を行う(担当:金勲)。④真菌由来のMVOCの測定法は既に確立しているが,今年度では真菌のみならず,細菌由来のMVOCの測定を行い,その特性を解析する(担当:鍵直樹)。⑤クールピットや床下吹き出し空調において,結露水が少ない場合,表面が劣化した場合,吸湿材料表面の場合における実験に基づくモデルを構築する(担当:諏訪好英)。⑥これまでの研究成果をまとめ,国内・国際学会での発表を行うほか,ジャーナルへ投稿する。⑦次年度以後の研究に必要な資料を得る(担当:全員)。
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