研究課題/領域番号 |
18H03809
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大林 茂 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (80183028)
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研究分担者 |
三坂 孝志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20645139)
浅井 圭介 東北大学, 工学研究科, 教授 (40358669)
野々村 拓 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60547967)
奥泉 寛之 東北大学, 流体科学研究所, 技術専門職員 (60647957)
永井 大樹 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70360724)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 風洞 / 磁力支持 / 天秤 / データ同化 / 非定常3次元渦流れ |
研究実績の概要 |
今年度は,強制加振法による動安定計測において,加振機構の複雑化や非定常支持干渉をもたらす機械的支持に代わり,磁力支持天秤装置(MSBS)を用いた動的風洞試験技術を確立した. まず,模型運動制御系の改良を行った.一般に静的試験で用いられるフィードバック制御において,変動する外乱に対する応答が定常な外乱に対する応答よりも悪化するという性質をもつことが制御系の周波数特性の解析から分かった.そこで,コイルに流す電流を調整することで容易に運動を調整することができるというMSBSの特徴を用いて,変動する外乱に対する応答の悪化を抑制するコイル電流を新たに追加する制御を提案した. 次に, MSBSにおける動的天秤評価法を確立した.制御用PCで計測されるコイル電流と,実際に模型に作用する磁気力に相当するコイル電流との間には,コイルや電源の周波数応答の影響が存在する.よって,計測したコイル電流値に対してこの影響を補正することで,模型に磁気力として作用する大きさに相当するコイル電流を,運動と同期して計測することができる.更に,模型が運動した際に影響が懸念される,位置・姿勢の変化による磁気力とコイル電流の関係の変化について考察した.その結果,本試験で対象とするゼロ迎角基準の低振幅加振では,加振方向の力を評価する場合は位置・姿勢の変化の影響が力評価に現れないことが分かった. 最後に,強制加振法による航空機模型の動安定計測を行った.動安定計測ではピッチングモーメントに対する静・動安定微係数を評価した.そのうち静安定微係数は模型運動を伴わない静的試験からも評価することができるため,静的試験も別途実施した.その結果,静安定微係数では静的試験で評価された値と強制加振試験で評価された値が7 %以内の精度で一致することが分かった.このことからも,模型運動制御法および動的天秤評価法の妥当性が確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子画像流速測定法(PIV)用のヘリウムバブル発生装置の購入,設置にやや時間を要したが,この装置を使用しない動的風洞試験を前倒しで実施し,順調に成果をあげることができた.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,基本形状について,粒子画像流速測定法(PIV)を用いた詳細な実験と,対応する数値解析を実施する.このため,磁力支持天秤装置を用いた低細長比円柱模型の空力計測技術を確立し,細長比0.5以下円柱の空力特性と後流構造の関係を明らかにすることを目的とする.東北大学保有の磁力支持天秤装置では既存のポジションセンサーを用いた場合,低細長比円柱模型の位置姿勢計測が困難であったことから,新たな模型位置計測法を導入する.さらに新模型位置計測法を適用した磁力支持天秤装置を用いて,細長比0.5以下の円柱の空気力計測を行い,平均空気力と非定常空気力からその空力特性を明らかにする.併せて,粒子画像流速測定法を用いて物体後流の速度場を調査し,空力特性と後流構造の因果関係を解明する.最後に詳細な非定常空力特性・流れ場の解明に向け,Implicit Large Eddy Simulationを用いた3次元非定常流れ場に関する数値解析を行い,包括的な低細長比円柱の空力特性に関する理解に役立てる.
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