研究課題/領域番号 |
18H03809
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大林 茂 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (80183028)
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研究分担者 |
三坂 孝志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20645139)
浅井 圭介 東北大学, 工学研究科, 教授 (40358669)
野々村 拓 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60547967)
奥泉 寛之 東北大学, 流体科学研究所, 技術専門職員 (60647957)
永井 大樹 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70360724)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 風洞 / 磁力支持 / 天秤 / データ同化 / 非定常3次元渦流れ |
研究実績の概要 |
今年度は,鈍頭物体の流体力学的性質を理解するため,気流に対して平行に配置された低細長比円柱の空力特性と後流場の関係を,磁力支持を用いた風洞試験と数値流体解析により調査した.円柱の細長比とは,断面直径と全長の比であり,円柱の空力特性を決定する形状パラメータである. 風洞試験では,細長比0.3-0.5円柱模型に対して空気力計測と粒子画像流速測定法(PIV)を用いた後流速度場計測を実施した.レイノルズ数条件は2.0×104-8×104の範囲に設定した.細長比0.3-0.5の抵抗係数は約1.18-1.20の範囲で一定となることが明らかになった.また円柱後流における再循環Bubbleに関しては,細長比の減少に伴い,円柱中心軸上での再循環領域長さが単調増加する一方で,Bubble内部の逆流速はおおよそ一定となることが確認された.非定常空力特性は高速フーリエ変換を用いた周波数解析により,抗力成分にはストローハル数でSt=0.03-0.05の低周波数変動が発生し,モーメント成分にはSt=0.03-0.05とSt=0.155の特徴的変動が現れることが確認された. 数値解析では,Implicit Large Eddy Simulationを用い,レイノルズ数を4.0×104と設定し,また細長比は,磁力支持天秤装置を用いて調査できなかった細長比0.3以下も含めた細長比0.1-1.0と定めた.細長比0.1-0.5の抵抗係数は約1.18-1.20で一定値をとり,風洞計測値と良く一致することが確認された.細長比0.5以下では円柱の抵抗係数は漸近収束することが新たに明らかになった.非定常空力特性では,横力・ヨーイングモーメント係数の周波数解析を実施した.細長比0.1, 0.5, 1.0円柱では細長比によらず,横力・ヨーイングモーメントにSt=0.11-0.14の変動が発生することが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
粒子画像流速測定法(PIV)を利用した風洞実験や数値解析も実施され,順調に成果をあげている.
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今後の研究の推進方策 |
基本形状について,風洞実験と数値解析で十分な成果をあげることが出来たので,最終年度となるR2年度では,実験と計算を融合するデータ同化の適用を主な目標とする.データ同化は,数値モデルの不確定要因(初期・境界条件,モデルパラメータ等)を観測値により統計的に修正する方法であり,数値気象予測の精度向上を実現する手段として用いられている.このようなアプローチは流体工学分野においても有用であると考えられる. データ同化の利用方法として代表的なものは以下である:1) 数値解析に必要な初期・境界条件の推定,2) 数値解析で経験的に与えられているパラメータの最適化,3) 数値解析と計測データを融合した統合データセットの作成,4) 感度解析による計測システムの評価と最適化,5) 数値解析モデルの評価法への統一的視点の提示.気象データ同化では数値気象予測のための初期条件推定が主な目的であるのに対して,工学データ同化ではモデルや計測の改善・最適化を積極的に行うことができると考えられる.例えば,数値解析で用いられる多種多様な物理モデルや経験的モデルを計測データに基づく推定によって改善したり,実験計測データや運用データを数値解析に同化する際に計測の有効性の事前検討や動的な計測方法の最適化をデータ同化の枠組みを用いて行ったりするといった可能性がある.
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