研究課題/領域番号 |
18H03811
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴沼 一樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30611826)
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研究分担者 |
鈴木 克幸 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (10235939)
川畑 友弥 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50746815)
三目 直登 筑波大学, システム情報系, 助教 (10808083)
森田 直樹 筑波大学, システム情報系, 助教 (20789010)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脆性破壊 / 高速亀裂伝播 / アレスト / 重合メッシュ法 |
研究実績の概要 |
研究代表者らが確立した局所破壊応力理論は、その妥当性こそ単純鋼板を対象とした実験と簡易数値モデルによる計算によって確認されていたものの、実際の船体部分構造である継手構造などを始めとした任意の構造体への適用は困難であった。この実現には、構造解析手法として最も一般的かつ強力な手法である有限要素法に局所限界破壊応力理論を実装した数値モデルを開発することが有効であると考えられる。しかしながら、局所破壊応力理論に基づき実構造体の脆性亀裂アレスト現象を再現するためには、1mオーダーの実構造に対して亀裂前縁近傍100μmオーダーの位置で局所応力を高精度に評価する必要がある。この極めて大きなスケールギャップを解消するためには、高精度と高効率を両立させたモデル化戦略が必要となる。 そこで本研究では、2次元問題を対象に有限要素法の枠組みで局所的な高精度を実現する「重合メッシュ法」を基礎に「局所破壊応力理論」を実装した高速亀裂伝播モデルの開発を行った。本モデルは、解析領域全体を対象としたグローバルメッシュに対し、それとは独立に高精度評価が必要な局所領域に対して柔軟に導入可能なローカルメッシュの特徴を最大限に活かし、高速伝播する亀裂先端近傍場のみを高精度化し、全体の計算コストの低減を狙ったものである。無限体中を高速伝播する亀裂先端前方の応力場であるBrobergの解を正解とした精度検証を実施し、高精度を実現する最小のローカルメッシュの定義方法を見出した。その結果、実際の構造体を想定した1mの亀裂伝播解析において、従来の有限要素法を用いた場合と比較して必要な計算自由度数を10%以下にまで低減することが可能であることを示し、計算効率の飛躍的な向上を達成した (Kishi, Shibanuma et al., Comp. Meth. Appl. Mech. Eng. 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重合メッシュ法に基づく高速亀裂伝播モデルの開発では、期待を大きく上回る計算効率の向上を実現した。これにより、脆性亀裂伝播を対象とした数値解析モデルの開発における最も重要なボトルネックの一つを解消し、従来不可能であった数値シミュレーションによる脆性亀裂伝播現象の定量的な再現の実現に大きく前進した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、重合メッシュ法に基づく高速亀裂伝播モデルの開発を進める。具体的には、「弾塑性問題への拡張」および「3次元問題への拡張」の2通りの拡張を独立に進め、最終的に両者を統合し、脆性亀裂伝播現象を再現するための破壊力学モデルを開発する。 また、昨年度に続きPMMA材を用いた実験を進め、現行の大型船体構造における継手構造で用いられる構造様式を忠実に再現した実用的な亀裂停止性能に関する検証を行う。具体的には、継手を構成する3枚の板部材の位置関係から、実構造で想定される2種類のシナリオ(シナリオ1:ハッチサイドコーミング→デッキプレート、シナリオ2:デッキプレート→ハッチサイドコーミング)に対応した実験的検証を行い、それぞれのシナリオにおける亀裂伝播挙動の差異と共に構造諸元の与える影響を明確化し、合理的に脆性亀裂アレストを実現するための検討を行う。
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