本年度は,まずアルゴンを推進剤としてレーザー維持プラズマ(LSP)生成しきい値のF値依存性を検証した.その結果,F値が小さほどしきい値は下がり,F1.5では2MPaで1450W程度,また0.7MPaで3000Wまで下がることがわかった.また,ファイバレーザー,ディスクレーザーのしきい値を考慮すると930nm-1070nm帯域でのLSPしきい値はレーザー強度と原子線吸収量によって決まることがわかった.以上の結果より,半導体レーザーを用いたLSPはスラスタ熱源となりうる可能性を実証した.一方で着火方法に関して,アーク放電を用いた手法では高圧電源,直流電源などが必要になるため,将来の宇宙推進機への応用には小型かつ軽量な着火手法が必要となる.そこでパルスレーザープラズマ,高周波放電,金属アブレーション,コンデンサ放電などを検証した結果,熱電子放出とコンデンサ放電を組み合わせることで50V,80mJでの着火に成功し,着火システムの重量を大幅に軽量化することに成功した. 数値計算ではLSPを維持可能なレーザーパワーの下限値を実験値と比較した.結果として,CFDは実験値を定性的には再現したが,両者の比較から固体レーザー維持プラズマでは,原子線吸収が重要な役割を果たすことが示唆された.そこで,原子線吸収のインパクトをドップラー拡がりのみを考慮した簡単な予備計算により調べた。その結果,吸収係数自体は,逆制動輻射吸収よりも二桁も大きいものの,その線幅は非常に小さいため,圧力広がりなどの線幅も考慮する必要があることがわかった.
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