独自開発した「対向衝撃波管」を用いて、衝撃波‐乱流の状態を独立に変化させた干渉実験を実施した。まず、対向衝撃波管作動にとって重要な隔膜破断挙動について、可視化・圧力変化測定実験と運動解析を行った。セロファン隔膜を用いると、中央の撃針作用部を中心に花弁状に隔膜が破断すること、またその際に進展する亀裂の伝播速度は圧力差に関わらずほぼ一定であるが、破断する花弁状破片の枚数は、圧力差の増加関数であることが示された。また、花弁状の隔膜破片の運動解析と衝撃波管作動時の圧力変化を調べた結果、圧縮波が衝撃波に遷移するまでに影響を及ぼす過程は、隔膜破断の初期(投影開口率約20%)のみであることが示された。次に、衝撃波マッハ数、乱流マッハ数、干渉距離を独立に変化させた干渉実験を行った結果、衝撃波面の変形に対して、干渉距離が大きく影響することが示され、従来の定常状態を扱う概念から、非定常性を導入することの重要性を示すことができた。比較的衝撃波マッハ数が低く、乱流マッハ数が高い場合、干渉距離が積分スケールの10倍程度以上になると、シュリーレン画像において衝撃波面が消失することが示された。この事実を理論的に裏付けるために、衝撃波と前方速度場の干渉をリーマン問題として捉え、その複数回の干渉によって衝撃波面が局所的に消失することをモデル化した結果、その程度の干渉距離を経ると波面全体に渡って衝撃波面が消失する条件を満たしていることが示された。このように、実験結果に裏付けられた衝撃波消失条件を提示することは、世界的にも初の成果であり、今後のソニックブーム緩和への応用にも極めて重要な知見となった。以上のように、本年度は、衝撃波‐乱流干渉に関する実験法の確立と物理変数の影響について、まとまった結果が得られ、今後の当該研究の発展に対しても、重要なreferenceとなるデータを提示することができた。
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