研究課題/領域番号 |
18H03814
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
河内 俊憲 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (40415922)
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研究分担者 |
小池 俊輔 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (40547064)
杉岡 洋介 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (20865604)
橋本 敦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (30462899)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非定常空気力学 / 先進光学計測 / 高レイノルズ数流れ |
研究実績の概要 |
本年度はまず昨年度末に取得した断層シュリーレン画像に対してスペクトル解析を行い、翼の各スパン方向位置における衝撃波振動の特性を明らかにした。その結果、翼根(内舷)側の位置では衝撃波は、おおよそ150 Hzで振動していた。これは後退角のない二次元翼におけるバフェット周波数と一致している。他方で翼端(外舷)側では、その振動数は240 Hz程度まで増加していた。これは本年度実施したPSPによる非定常圧力計測とも一致していた。 これらに加え、2019年度に確立した2断面断層シュリーレン(FS)システムを風洞実験に適用した。当初、2断面FSシステムを単体で実験に適用し、これが上手く行った場合、非定常PSPと組み合わせる予定であった。しかしながら、コロナウイルスの影響で試験期間が変更され、2断面FSシステムを単体で適用する試験が行えなくなったため、これをスキップし非定常PSP-2断面FS同時可視化に踏み切り、これに成功した。これは間違いなく世界初の快挙である。FSの計測断面はスパン方向40%を基準とし、30%から50%まで振ることができたけれど、緊急事態宣言に伴う試験準備の遅れから、外舷の計測は行えなかった。これに関しては来年度実施する。なお試験実施が年度末の3月であったため、解析は今進めている。また解析手法として、これまで行ってきたスペクトル解析に加え、新たに動的モード分解を試み、その有用性を確認した。 数値計算では全体安定性解析により流れ場の振動モードを抽出した。その結果、実験で見られた外舷での衝撃波振動はコーナーはく離に起因した波の伝播により引き起こされている可能性が高いことが示唆された。その一方で、コーナーはく離の大きさなどは、数値計算では実験より過大評価されており、これを解決するために風洞壁を含めた計算も併せて行ったけれど、解決には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画として「1) 後退角付きCRM模型の衝撃波振動の特性把握」、「2) 後退角なし/後退角付きCRM模型のPSPによる壁圧計測」、「3) 後退角付きCRM模型の衝撃波振動の2断面同時FSによる衝撃波の可視化」、および「4) 後退角なし/後退角付きCRM模型の数値シミュレーションの継続」を挙げていた。 1)に関しては達成できた。2)に関しては、後退角付き模型では非定常圧力計測が実施できたが、後退角なし模型ではPSPの不具合から定常圧力を計測するのみに留まった。3)に関しては、コロナウイルスの影響で実験準備や実施期間に影響があったけれど、関係者各位の努力のおかげで、その影響を最小限に留めることができ、エクストラサクセスとして挙げていたPSP-2断面FS 同時計測を実施できた。ただし試験準備の影響で、2断面FS 計測単体の試験はスキップした。4)に関しては、非定常CFDを実施し、全体安定性解析を実施し、衝撃波振動の周波数などは実験と一致することが確認できた。しかしながら、一部実験との相違点に関しては、その原因を見つけ解決出来なかった。 また当初成果を発表する予定であった国内学会が中止になり、国際会議の先行きが不透明で発表を取りやめたことから、成果発表が少ない。そこでこれらを加味し,「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、風洞実験において、計測断面が限定されてはいるものの、非定常PSP-2断面断層シュリーレン同時計測まで実施できた。これは計測としては、当初計画で掲げていた目標のエクストラサクセスに当たる。その一方で、スペクトル解析や動的モード分解などの解析手法は整い、後退翼バフェットにおける衝撃振動の周波数等の実験事実は明らかになりつつあるけれど、後退翼バフェットメカニズムの理解は遅れている。そこで2021年度は、実験的には計測断面を増やし、データの蓄積を行うとともに、実験と数値計算の比較から現象の理解を進め、後退翼バフェットの衝撃は振動モデルの構築を試みる。またコロナウイルスの影響で、成果の発表件数が現状少ないので,論文投稿や学会での発表も含め,研究成果の公表を積極的に行う。
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