研究課題/領域番号 |
18H03825
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
兼田 敏之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10192543)
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研究分担者 |
森山 甲一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10361776)
高橋 雅和 山口大学, 大学院技術経営研究科, 准教授 (20621105)
市川 学 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (60553873)
菱山 玲子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70411030)
内田 瑛 青山学院大学, 情報メディアセンター, 助手 (60782323)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歩行者エージェントモデル / 機能的階層 / 都市モバイルエージェンモデル / 混成流シミュレーション / 視界駆動 / 「自然な動き」 |
研究実績の概要 |
(1)歩行者エージェントの5つの機能的階層のモデリング枠組みと複合層モデリングの可能性を扱う研究構想を発表した。この機能的階層とは、物理作用層、近接作用層、空間認知層、情報レセプタ層、高次知的機能層であり、既存のモデルが近接作用層に集中していること、また、空間認知層モデルは既往研究が少ないものの、近接作用層を基礎づける重要な層であることを論述した。 (2)また、都市歩行者空間上における都市モバイルエージェントと称して歩行者エージェントのみならず自動車エージェント、自転車エージェントを新たに発案しての混成流シミュレーションの分析を行った。歩車混成流におけるFundamental Diagram(密度-速度グラフ)の試算を行った。 (3)3次元都市空間上における視界駆動型歩行者エージェントの新規モデルとして、既成のVDPA1に視認回避ルールを導入したVd18sの試作を行った。Vd18sは、「見通し線」と「直進可能線」の2種類のisovistを有しており、当初目的を発見するまでは単純な「直進可能線」最長原理で方向決定を行うが、目的を発見した後にその目的まで直進可能な場合には直進するが直進不能な場合には視認回避ルールによって歩行障害物を回避する点に特徴がある。富山広場のファニチャレイアウトを対象に既存モデルとの比較により歩行者通行軌跡のシミュレーション分析を行った。 (4)同じく、3次元都市空間上における視界駆動型歩行者エージェントの新規モデルとして、内部に極座標を持ち「自然な動き」を模擬するVD-Walkerの試作を行った。既成のモデルとして知られるTurner&PennのEVA と比較すると、Bin数無限大グリッド間隔無限小を仮定した場合にEVAに一致する性質を持つ。金山地区において歩行者シミュレーション分析を行い、実測結果との突合せなどで知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目は、年度初頭の研究実施計画にも示したように、空間認知層モデルである視界駆動型歩行者エージェントモデルとして、Unity上に設えた都市空間プラットフォーム上においてVd18sとVD-Walkerの2つのモデル試作を行った。これは(1)人工社会理論・エージェント工学、(2)空間システムの各トピックに跨る試作プロジェクトである。Unityにエージェントプログラムを「直書き」する構成を採ったためか、試作作業に3か月程度の遅延はあるものの、2年度以降の研究企画を詳細に検討する上で重要な知見を得ており、今年度にこの取り組みに着手できた意義は大きい。また、昨年9月に実施した大須地区回遊行動調査により、商業集積地区来訪者の回遊行動について400票弱のデータ採取を行うことができた。これは(3)賑わい計測、(4)マイニング分析の双方に跨る研究トピックであり、今年度は十分に進捗したと言える。なお、(5)避難所モデリングについては、Occupant Analysisにかかわる文献サーベイといった企画調査にとどめた。(6)成果発信としては、研究構想ならびに成果は国際会合DCC(Design Computing and Cognition), ABMUS(Agent-Based Modelling on Urban System), PED(Pedestrian & Evacuation Dynamics)にて公表したほか、国内会合JASAGで企画セッションを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)エージェント工学ならびに(2)空間システム上の推進方策としては、これまでの研究作業をそれぞれ前進させるとともに、都市空間プラットフォーム上での視界駆動型歩行者エージェントモデルの視野の半球化など「三次元化」を推し進める。さらにプラットフォームの機能強化のために他のシミュレーションモデリングソフトなどとの連携を図る。さらに(3)賑わい計測との組み合わせにより、岡崎市中心市街地におけるエンカウンター調査、名古屋市金山駅構内のLiDARを活用した歩行者分布測定などを踏まえた歩行者エージェントシミュレーション分析を進展させたい。また、(4)マイニング分析については、大須地区回遊行動データの本格的マイニング分析のほか、質問調査データを歩行者行動ルールに組み込むマイニング技術の方法論の整備に着手したい。(1)人工社会理論、(5)滞在者モデリングの推進方策として引き続き人工社会型社会シミュレーションの企画調査を続行するとともに、可能であれば単純な試作開発まで進みたい。(6)成果発信としては、研究成果をsss(Space Syntax Symposium), SSC(Social Simulation Conference), CUPUM(Computer on Urban Planning and Urban Management)などの国際会合で発表を予定している。また、国内会合で引き続き企画セッションを実施したい。
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