研究課題/領域番号 |
18H03825
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
兼田 敏之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10192543)
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研究分担者 |
森山 甲一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10361776)
高橋 雅和 山口大学, 大学院技術経営研究科, 准教授 (20621105)
市川 学 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (60553873)
菱山 玲子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70411030)
壽崎 かすみ 龍谷大学, 国際学部, 准教授 (70351335)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歩行者 / エージェント / シミュレーション / 群集事故 / 賑わい分布 / 三次元都市空間 / 視界駆動型エージェント / EVA |
研究実績の概要 |
(1)歩行者エージェントのモデリング枠組みのうち近接作用層モデルの研究成果として、昨年度の国際研究集会において発表したASPFによる歩車混成流シミュレーションの研究成果が国際学術誌で公表された。また、ASPFモデルを用いての中国上海外灘広場の群集事故のモデル分析を学術誌に公表した。 (2)また、空間認知層モデルの研究成果として、三次元都市空間を表現するUnity上で稼働する視界駆動型歩行者エージェントとして昨年試作したVd18sについて、国際研究集会で成果を発表・公表することができた。また、視界駆動エージェントにはwayfinding状況における標識レイアウトのモデル分析があり、豊田市駅広場を事例にUnity上でVd18sのシミュレーションの実験報告の書籍掲載が決定している状況である。さらに、人間の広場待合せ行動データ採取を支援する仮想空間ゲーミング実験システムの研究成果が国際研究集会で発表されるともに、この論文の書籍掲載が決定している。 (3)また、視界駆動型歩行者エージェントの規準モデルにあたるUCLグループのEVAの三次元拡張を試みるVD-Walkerの開発を終えており、金山地区を事例としての開発報告が国際研究集会でポスターが発表されるとともに、書籍掲載が決定している状況である。また、EVA(DepthmapにおけるAgent Analysis)の算出する賑わいの空間分布と金山地区でのエンカウンター調査結果を突き合せた分析結果が国内学術誌に掲載された。 (4)大須地区における回遊行動調査について、20年間5回にわたる調査結果のレビュウの書籍掲載が決定するとともに、ショッピングセンター内のPOSデータの活用状況の研究論文の書籍掲載が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)一二年目には、空間認知層モデルである視界駆動型歩行者エージェントモデルとして、Unity上に設えた都市空間プラットフォーム上においてVd18sとVD-Walkerの2つのモデル試作を基軸に、エージェント機能付加と空間事例における多様な適用研究を推し進めた。これは(1)エージェント工学、(2)空間システムのトピックに跨る試作プロジェクトである。VD-Walkerの開発はすでに完了しており、またVd18sにおける視界の3次元拡張版の作成も試みた。Unityを用いての三次元都市空間内歩行者エージェントシミュレーション研究は基礎知見を十分探ることができ、これは想定以上の成果である。反面、当初掲げていた機能的階層の複合層モデルについては、計算量制約やプログラム実装の手間の問題でこれ以上の進捗は見込めないと考えるに至った。ゲーミング実験システムは三年目を想定していたが、Unity上の仮想都市空間における人間行動のデータ採取に有益であることが明らかににあり、前倒しの恰好で二年目から広場における待合せや大須地区におけるwayfindingの実験システムの研究が進捗している。これは計画以上の進展といえる。 (B)人工社会構築について企画調査を行ったところ、一年目に回遊行動調査データを採取した大須地区を事例として都心来訪行動を扱う人工社会システムが好適ということになり、準備に取り組んでいる状況である。これは(1)人工社会理論、(3)賑わい計測、(4)マイニング分析などに跨る研究トピックである。なお、 (5)避難所モデリングについてはGISを用いた地域分析で進展が見られた。 (C)成果発信としては、SSS12、CUPUM、ccs2019など国際研究集会で発表を行ったほか、国内研究集会JASAGで企画セッションを実施した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)エージェント工学ならびに(2)空間システム上の推進方策としては、これまでの研究作業をさらに前進させるとともに、都市空間プラットフォーム上での視界駆動型歩行者エージェントモデルの視野の半球化など「三次元化」を推し進めたエージェントモデリング研究を前進させる。また多彩な空間行動のデータ採取のためにゲーミング実験システム研究を前進させる。 さらに(3)賑わい計測との組み合わせにより、岡崎市中心市街地や名古屋市栄地区におけるエンカウンター調査などに基づいた歩行者空間分布の推計と組み合わせた歩行者エージェントシミュレーション分析を進展させたい。また、(4)マイニング分析については、大須地区回遊行動データの本格的マイニング分析のほか、質問調査データを歩行者行動ルールに組み込むマイニング技術の方法論の整備に着手するとともに、(1)人工社会理論では、大須地区を事例とした都心来訪行動を扱う人工社会型社会シミュレーションの試作改良に取り組む。その際、地区レベルの賑わいについての政策手段を検討するために、再開発プロジェクトの研究に着手する。(5)滞在者モデリングの推進方策としては、Covid-19にテーマを絞って、三年目から雑踏における感染症リスクのシミュレーション研究などを企画する。 (6)成果発信としては、Springer社から準備を進めている英文書籍”Downtown Dynamics” (2020年8月刊行予定)に本基礎研究をここまでの成果を掲載する段取りで進めている。なお、国際研究集会PED、ABMUSなどでの発表準備を進めていたが、いずれもコロナ禍の影響で中止になったため、オンライン会合参加などを試みたい。また国内研究集会で引き続き企画セッションを実施したい。
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