研究課題/領域番号 |
18H03825
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
兼田 敏之 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10192543)
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研究分担者 |
森山 甲一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10361776)
高橋 雅和 山口大学, 大学院技術経営研究科, 准教授 (20621105)
市川 学 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (60553873)
菱山 玲子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70411030)
倉橋 節也 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (40431663)
夏目 欣昇 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40362321)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歩行者 / エージェント / シミュレーション / 視界駆動型エージェント / EVA / 三次元都市空間 / 隣接確率評価 / Covid-19 |
研究実績の概要 |
(1)Covid-19状況におけるディスタンシングの在り方のエージェントシミュレーション分析として、駅構内空間における歩行者の回避行動の測定からモデリング、対策シミュレーションまでの一連の分析を行い、その成果論文は学術誌で査読中である。またエージェント技術研究の成果として、歩行者モデルにおける回避行動の強化学習の研究が国内学会で発表された。 (2)三次元都市空間上で稼働する視界駆動型歩行者エージェントのモデリング研究については、その基礎データ採取にあたるアクティヴィティの観察調査のほか、視野の半球化など「三次元化」を推し進めたVd19についてその研究概要を国際学会で発表することが決定しており、また多彩な空間行動のデータ収集の方法としてVRなどを用いたゲーミング実験システムの研究が進捗し、その一部を国内学会で発表することが決定している。 (3)都市のミドルスケール規模の賑わい計測については、実測調査、代替指標の活用に代わる携帯電話GPSデータが有望視されるに至り、今年度はその市販データサービスの選定ならびに岡崎市中心市街地や名古屋都心域などでデータ採取などを行い、その進捗の一部を国際学会で発表することが決定している状況である。また、人工社会シミュレータ構築のためのプラットフォームとして、SOARSの高速化の研究が国内学会で発表されている。 (4)成果発信としては、採択期間以前からこの時点までの研究成果をまとめた英文書籍”Downtown Dynamics” が刊行された。内容には、大須地区における20年間5回にわたる回遊行動調査のレビュウ、賑わいの代替指標として地価・賃料の要因分析におけるスペースシンタックスの効果検討、再スケジューリング機能を有する回遊行動エージェントモデルの構成とそのモデルが構成する動学系などを含む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響による国内外の会合の発表機会の減少により成果発表活動が低調になったほか、研究者の研究時間減少、市中調達の納品遅れなどのために全般的に遅れが生じた。 (A)コロナ禍における歩行者の空間行動に関する観察調査研究は順調に進捗した。また、近接作用層モデルによる歩行者シミュレーションの適用トピックの多様化は進展がみられるとともに、その自動モデリングに資する強化学習研究に進捗がみられた。また空間認知層モデルとして三次元都市空間プラットフォーム上における視界駆動型エージェントのうち、Vd系では「円錐型」視界を導入したVd19を用いてのサイン認知を含む経路探索(wayfinding)問題への取組みなど進捗がみられ、次年度もさらなる進捗が期待できる。また多彩な空間行動のデータ収集の方法としてゲーミング実験システムについては複数の試作が行われ、またVRの導入検討が行われるなど、進捗がみられている。 (B)今年度の人工社会のモデル設計のうち、(1)英文書籍の編集作業を通じての既存知見整理が進捗, (2)おもに用いる賑わいデータ源として市販データサービスの検討と選定を行ったものの、(3)プラットフォームの選定については、市販サービスのリリースが遅延するなか、学術研究用途のソフトウエアであるSOARS toolkitの研究が公表されるなど、選定のための詳細な検討が必要となり、また(4)都市のアロメトリーの発想の導入検討が新たに望まれている。 (C)成果公表と研究交流については、昨年8月刊行の英文書籍のダウンロード数が8ヶ月間で978、またフェイスブックで開示しているシミュレーション動画の最多再生数が860である。また国内外学会の対面式発表が相次いで中止されたこともあり、実施企画セッション数は0となった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)コロナ禍における歩行者の空間行動(activity)に関する観察調査研究の成果公表を促す。(2)近接作用層モデルによる歩行者シミュレーションの適用トピックの多様化や、(3)その自動モデリングに資する強化学習研究の進捗を促す。また(4)三次元都市空間プラットフォーム上における視界駆動型エージェントVd系について、視界のみならず歩行表面の起伏の三次元化の導入改良により、サイン認知を含む経路探索(wayfinding)に取り組む。(5)多彩な空間行動のデータ収集の方法としてVRを導入したゲーミング実験システムの研究を進展させる。 (6)最終年度まで研究を前進させたい人工社会は、(a) 実事例(中京都市圏・名古屋都心域・名古屋市大須地区)における自由外出行動を扱うこと、(b)実データとより「密」な整合性を有すること、(c)大規模化が可能であること、(d)都市の小スケールと大スケールのあいだにある中スケールで生じる事象に焦点をあわせての一般性を有することが望まれており、次年度では(c)プラットフォームの選定、(d)都市のアロメトリーの発想の導入検討を済ますことで、基本シミュレータの立ち上げまで辿りつきたい。(7)地区レベルの賑わいについての政策手段を検討するために、再開発プロジェクトにかかわる諸研究を前進させる。なお、(8)エージェントモデリングでは、質問調査データを歩行者行動ルールに組み込むマイニング技術の確立を目指す。 成果公表と研究交流については、コロナ禍は今年度も影響を受けると考えられるため、活動の主軸は対面発表セッションよりは、オープンアクセス化を強く意識した書籍や論文に重点を移したい。
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