研究課題/領域番号 |
18H03829
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
才田 淳治 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 教授 (20359540)
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研究分担者 |
譯田 真人 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主任研究員 (00550203)
新山 友暁 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (00583858)
佐藤 成男 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (40509056)
山田 類 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (40706892)
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80323096)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金属ガラス / 緩和状態制御 / 非アフィン歪み / 構造若返り / 機械的特性 |
研究実績の概要 |
本研究の課題は大きく3つに分けられる。すなわち、課題A:非アフィン歪みの導入による緩和状態制御と靱性改善、課題B:非アフィン歪みの導入過程および状態の階層的解析と理論構築、課題C:実用品形状での緩和状態制御技術の確立と機能改善である。 課題Aでは、雰囲気制御急速加熱冷却装置による室温-ガラス遷移温度直上加熱-急冷プロセスにおいて、種々の試料ホルダーや熱処理条件を検討し、技術確立を行なった。その中で、円柱状試料の直径方向に傾斜した非アフィン歪み分布(緩和状態分布)を導入できることを世界ではじめて見いだし、論文として発表した。傾斜した非アフィン歪み分布を有する試料では、通常金属ガラスでは起こり得ない加工硬化現象が発現し、すぐれた塑性変形性(靱性)を示すことを明らかにした。 高圧プレス機を用いた高圧加熱急冷処理による構造変化(若返り)では、エネルギーと体積の1対1対応が崩れるという重要な知見を得て、論文として発表した。 課題Bでは、中性子回折による緩和状態評価についての検討を終えたが、緩和-非アフィン歪み導入(若返り)によるハローピ-クの強度変化、中距離範囲での平均距離変化から局所構造に違いが見られるとの推測は得られたものの、その変化は小さく学術的な考察を加えることはできていない。最終年度も引き続き解析を継続する。「非アフィン歪みの導入がもたらす構造変化」では分子動力学シミュレーションによる解析を継続して実施した。不均一局所構造に対応した若返りプロセスの不均質化および局所構造遷移のダイナミクスを論文として発表した結果を踏まえ、さらにナノスケールでの不均一性の生成から規則化に至る過程を明らかにした。課題B-3「非アフィン歪みの導入による緩和状態制御の理論構築」および課題C:実用品形状での緩和状態制御技術の確立と機能改善は、2021年度に行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
課題A群では、非アフィン歪み導入に関する研究では、室温-ガラス遷移温度直上加熱-急冷および室温-液体窒素温度繰り返し冷却の2つの手法によって課題を遂行できている。この研究では、試料中に2次元的な非アフィン歪み(緩和状態)分布を傾斜的に導入する新たな手法を開発し、論文として発表した。このような制御をした試料では、通常は観察されない加工硬化現象が見かけ上発現し、きわめて優れた靱性を発揮できていることが注目される。最終年度(2021年度)に向けて、変形機構の解明等の研究を実施し、論文として発表することを計画している。また、高圧加熱急冷処理の前倒し検討では、第1報の論文発表に引き続き、第2報としてエネルギー-体積の1対1相関の崩れが考察されること、さらに第3報として結構化過程における安定な特異ナノ構造の出現についてそれぞれ論文として発表した。 課題B群では、「外的要因による内部歪み状態の変化」として、中性子回折による構造解析を引き続き実施した。しかしながら局所構造解析ではまだ確固たる変化を示す結果は得られていない。「非アフィン歪みの導入がもたらす構造変化」は、分子動力学シミュレーションを用いた構造若返りによる局所環境変化のダイナミクスはすでに2019年度に論文として発表したが、2020年度はそのような特異状態で生成するナノスケールの規則化現象を考察している。現在論文化にむけて鋭意解析を急いでいる。「非アフィン歪みの導入による緩和状態制御の理論構築」および課題Cは2021年度に検討する予定で、このためにメンバー間のディスカッションも進める。 以上のことを総合的に勘案すると、当初予定していた論文発表に加えて、新たな注目される構造制御手法も見いだしていることから、本課題は当初の計画以上に進捗していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
課題A群では、これまでに導入した装置を活用し、熱的過程による非アフィン歪み導入法の開発と評価を計画通りに進める。室温-液体窒素繰り返し冷却では、非アフィン歪みの傾斜導入によって優れた特性改善を示すデータが得られており、関連実験を推進して論文化を進める。また加熱-急冷による非アフィン歪みの傾斜導入についても既に論文発表を終えているが、追加の実験を計画している。これらに関連して、非アフィン歪み導入による構造若返りがもたらす変形挙動変化の分子動力学シミュレーション解析を引き続き進め、理論構築へと進展させる。なお、高圧プレス機を用いた高圧加熱急冷処理による動的な若返り構造変化については2020年度までに予定していた論文発表を終えることができた。 課題B群では、各種特性評価の継続とともに、中性子回折による精密構造解析を実施するが、これまでの検討で局所構造変化の詳細を明確にできない可能性があるので、分子動力学シミュレーションによる局所構造解析に注力する。これらの結果をもとに、非アフィン歪み導入と構造若返りとの相関、さらには局所構造変化のさらなる解析、考察を実施していく予定である。最終年度にかけてそれぞれの課題の結果を慎重に検討し、学会や論文としての発表を行っていくとともに、メンバー間のディスカッションも積極的に進める。 課題C群では、これまでの主として円柱形状試料から、実用形状として板状またはディスク状の試料に対して、有効な非アフィン歪み制御(緩和状態制御)を検討し、技術確立を目指す予定である。
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