研究課題/領域番号 |
18H03835
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
八木 俊介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60452273)
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研究分担者 |
山田 幾也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30378880)
池野 豪一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30584833)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 酸素発生反応 / 電気化学触媒 / 電解製錬 / アノード / ペロブスカイト型構造 / 四重ペロブスカイト型構造 / 記述子 |
研究実績の概要 |
亜鉛の電解製錬は,我が国で最も重要な製錬プロセスの一つである.その中核を成す電解工程では,陰極上に亜鉛が還元析出されると同時に陽極において水の酸化分解反応(酸素発生反応)が進行する.現在,陽極には銀を1wt%程度含有する鉛電極が用いられており,この電極は比較的安定ではあるものの酸素発生反応の過電圧は1 V程度とかなり高く,電気エネルギーの大幅な損失の原因となっている. 本年度は,酸素発生反応に対して高い活性を有する酸化物触媒候補材料の安定性の評価を,塩基性・中性・酸性水溶液を用いて行った.その結果,酸性水溶液中では貴金属酸化物以外の酸化物はほとんど溶解することが明らかとなった.そのため貴金属酸化物を中心に酸性水溶液中における触媒活性の評価と比較を行い,現在もメカニズムの解明に取り組んでいる.また,塩基性水溶液中における酸化物触媒候補材料の触媒活性評価結果を系統的に検討することにより,以下の知見を得た. 1. 単純ペロブスカイト型構造の遷移金属酸化物CaBO3よりも四重ペロブスカイト型構造の遷移金属酸化物CaCu3B4O12の方が酸素発生反応に対する触媒活性は高くなった(B = Ti, V, Cr, Mn, Fe, and Co). 2. 活性の高さは「Fe>Co>>その他の遷移金属」の関係があった. 3. O 2pバンドの中心とBサイト遷移金属の非占有3dバンド中心のエネルギー差を触媒活性の記述子として提案し,構造が同じまたは類似であれば,このエネルギー差が小さいほど触媒活性が高くなることを実験と計算を組み合わせて明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記成果に関して,これまでにすでに3本の英文原著論文を発表しており,一部プレスリリースも行っている.また一連の検討の中で,酸素発生反応と酸素還元反応の両方に高い活性を有する触媒材料も得られたため,派生研究として,金属空気電池などのデバイス中で評価を行うためのセルの試作を行うまでに至っている.
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今後の研究の推進方策 |
比較的酸化物が安定な塩基性水溶液中においては,数多くの触媒候補材料の系統的な評価によって,酸素発生反応のメカニズムの解明および触媒活性を高くするために必要な因子について,深い考察を行うことができた.しかしながら,酸性~中性領域においては多くの酸化物は不安定で溶解するため,系統的な評価・比較が困難な状況にある.今後はより幅広いpH領域において酸素発生反応に対して活性を有する可能性の高い,貴金属酸化物や金属材料を中心とした評価にも力を入れていくとともに,酸性~中性領域における酸素発生反応のメカニズムと塩基性領域における酸素発生反応のメカニズムの差異についても検討を行う.また一連の検討の中で,酸素発生反応と酸素還元反応の両方に高い活性を有する触媒材料を発見するなど,思いがけない進展もあったため,派生研究として,金属空気電池などのデバイスの試作と応用も行う.得られた成果はこれまで通り,学術論文としてや学会などで積極的に発表していく予定である.
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