研究課題/領域番号 |
18H03836
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西山 宣正 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (10452682)
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研究分担者 |
周 游 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (40357231)
日向 秀樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (40415732)
尾崎 典雅 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70432515)
川村 史朗 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (80448092)
境 毅 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 講師 (90451616)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 窒化物 / 酸窒化物 / 高圧力 / レーザー衝撃圧縮 / 放射光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1万気圧から1000万気圧までの広い圧力範囲での超高圧合成法と、シンクロトロン放射光やX線自由電子レーザーなどの量子ビームをフル活用した材料評価を組み合わせて、これまでにない新奇な酸窒化物の合成とその物性を理解することである。 2019年度は、シリコン酸窒化物(Si2N2O)の高圧相関係とその高圧相物質の力学的性質を中心に研究した。Si2N2OはSiO2とSi3N4がモル比で1:1に混ざった化学組成である。常温常圧下ではSi2N2O組成のシオナイトが安定に存在するが、高圧下ではSi2N2O組成の高圧相が存在するのか、SiO2相とSi3N4相へ相分解するのか、明らかになっていなかった。そこで高純度Si2N2Oを研究分担者が作成し、それを出発物質として高温高圧実験を実施した。その結果、14万気圧以上の圧力下では、SiO2スティショバイトとγ-Si3N4に分解し、ナノコンポジットを形成することがわかった。前者は最も硬い酸化物であり、後者は全物質中3番目に硬い物質である。このナノコンポジットのビッカース硬度試験を行い、硬さ:33 GPa、破壊靭性:6.5 MPa m1/2を得た。 亀裂進展の様子を透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、亀裂がSiO2スティショバイトの粒内を進展していることが明らかになった。これによりSiO2スティショバイトの破壊誘起アモルファス化が起こり、高い破壊靭性を達成していると考えられる。 2020年度以降は量子ビームを使った破断面における分析を実施して、この高靭化機構によって生じた低配位数SiO2物質の存在を実証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に進展している。 とくに研究分担者との共同研究が順調に進展している。Si2N2Oシノアイト粉末は試薬として購入することができず、かつ酸窒化物であるため合成が難しい。そこで研究分担者のもとで高純度Si2N2O粉末の合成を可能にする技術開発を行い、得られた粉末を用いて高温高圧実験を実施したことが研究成果に結びついた。 さらに立方晶窒化ケイ素(γ-Si3N4)に関して、シンクロトロン放射光を用いた高圧下におけるX線回折実験を行ったデータや、2-310Kまでの低温下で測定した比熱のデータを欧州の学術誌に投稿し、論文が掲載された。ドイツやスロバキアなど欧州の共同研究者との共同研究の成果であり、国際共同研究も順調に推進している。 以上のことから、全体的におおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、2020年度は、より低い圧力領域での窒化物および酸窒化物の合成、あるいは大型の多結晶試料の合成に取り組む。2018年度および2019年度はレーザー衝撃圧縮実験やダイヤモンドアンビルセルを用いた数十万気圧から数百万気圧までの実験を中心に行ってきた。この研究提案では、数万気圧から数百万気圧までの広い圧力領域で様々な高圧装置を駆使して横断的に実施する。2020年度は大型試料を合成できるベルト型装置を用いた8万気圧までの研究、マルチアンビル型装置を用いた1cm級の試料を15万気圧までの圧力領域で行う。大型試料を使って、機械的性質、熱的性質など様々な物性測定を実施し、特徴ある新規物質合成に取り組む。
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