研究課題/領域番号 |
18H03837
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
鎌土 重晴 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (30152846)
|
研究分担者 |
宮下 幸雄 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (00303181)
中田 大貴 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (80800573)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | マグネシウム合金 / プレス成形性 / 展伸加工 / ミクロ組織 / 集合組織 / 結晶塑性解析 |
研究実績の概要 |
マグネシウム合金板材の室温プレス成形を可能とする最適組織設計指針の構築を目的として、室温プレス成形中の微視変形機構を調べた。また、室温プレス成形性に及ぼす微細組織因子の影響も評価した。 マグネシウム合金板材の室温プレス成形(張出し成形)中には、底面すべりと柱面すべりが活動し、変形に寄与する。結晶粒径が微細になると、柱面すべりの活動が活発になるため、室温張出し成形性は向上することを明らかにした。例えば、商用Mg-Al-Mn合金圧延材でも、(0001)面が板面に配向する底面集合組織の形成を抑制し、結晶粒径を8um程度まで微細化することで、張出し成形性の指標であるエリクセン値(商用Mg合金では3mm程度)は~8mmまで向上することがわかった。また、Znの添加によっても柱面すべりが生じやすくなり、Znを微量に添加した低濃度Mg-Al-Ca-Zn-Mn合金圧延材は、8.7mmの高いエリクセン値を示すことを明らかにした。一方、曲げ加工時には、底面すべりや柱面すべりの他に、引張双晶も生じる。商用Mg-Al-Mn合金圧延材は、20um程度の粗大な結晶粒径を持つ場合に良好な曲げ加工性を示すことから、引張双晶によって室温プレス成形性が改善する可能性も明らかにした。 以上のような、微細組織-室温プレス成形性の関係解明に加えて、圧延加工および熱処理中の集合組織形成過程も検討した。圧延加工中に動的再結晶が生じると、その後の圧延加工中には動的再結晶粒の(0001)面が板面に平行に配向する。また、圧延加工後の熱処理中には、動的再結晶粒が優先して成長することから、動的再結晶の抑制が、(0001)面配向の弱化に有効である可能性を発見した。また、CaとZnの同時添加は、圧延加工中の動的再結晶粒の結晶回転を抑制し、底面集合組織の形成を抑制する効果があることも明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2018年度の実施項目であった、室温プレス成形中の変形機構、および微細組織-成形性の関係解明に加えて、今年度および次年度の実施予定項目である圧延加工・熱処理中の集合組織形成メカニズム解明にも取り組み、既に組織制御指針となる知見を得ている。また、次年度実施予定の結晶塑性解析プログラム開発やそれを利用した各種変形機構の臨界分解せん断応力の決定にも着手し、既に学術論文としても公表するに至っていることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
精緻な組織観察と結晶塑性解析を利用したマルチスケールな観点から、マグネシウム合金圧延材の微細組織因子と機械的性質の定量的な関係を構築する。特に、柱面すべりや双晶変形の活動によって室温プレス成形性が向上することを明らかにしていることから、その理由の解明と、柱面すべり・双晶変形を活発に生じさせるための微細組織因子の解明を進める。室温プレス成形性の向上と同時に、マグネシウム合金中の転位と析出物間の相互作用も微視的および巨視的視点から検討し、高強度の付与に必要な析出物の形状やサイズ・数密度を明らかにする。また、底面集合組織の形成抑制に必要な因子や手法も明らかにしつつあることから、(0001)面の一層の配向弱化を目的とした合金元素や加工熱処理条件の最適化を実施し、マグネシウム合金圧延板材のプロセス-微細組織の関係の構築を進める。一連の実験より、プロセス-微細組織-機械的性質の定量的な関係の解明、合金設計指針や組織制御技術の提案まで行い、優れた室温プレス成形性を持つ高強度・高延性マグネシウム合金圧延材の開発にまで発展させる。
|