転位は,結晶性材料において原子配列の連続性が局所的に乱れた線状欠陥である.機能性材料において,転位はしばしば電子構造上の特異点となり,材料の機能的特性を低下させる.しかし,機能特性における転位の影響に関する研究のほとんどが間接的な計測からの推察に基づくものであり,実際の転位の機能についてはその多くが不明なままとなっている. そこで本研究では,転位分布およびコア構造制御が施された転位を機能性材料中に自己的に形成させ,転位の原子・電子構造を高性能電子顕微鏡法により解析するとともに,機能性材料における転位が材料の機能的性質や機械的特性に及ぼす影響を評価している. 本研究では,機能性材料の小角粒界の電気伝導特性評価を行い,小角粒界では転位線方向に高い電気伝導性を呈していることから,転位に沿った電気伝導性が高いことが分かっている. その後,転位の電気伝導特性が転位間隔によってどのように変化するのかをについて、双結晶法により傾角の異なる小角粒界を作製し、その電気伝導特性の計測を行った.興味深いことに,転位は,1本あたりの電気伝導率が転位間隔で異なることが分かった.これは転位間のスペースチャージの重なりによるものと推察された.さらに,転位列と横切る方向に電気伝導特性評価を行った結果からは,転位間隔が広くなるに従い,急激に電気伝導率が低下することが分かった.その上,交流電圧を付加し,電気伝導特性を評価した結果から,転位列を横切る伝導の場合,転位それぞれが持つスペースチャージが逆に障壁となって,特異な電気伝導特性を発現することが明らかとなった.
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