研究課題/領域番号 |
18H03841
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松田 厚範 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70295723)
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研究分担者 |
河村 剛 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10548192)
小暮 敏博 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (50282728)
大幸 裕介 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70514404)
中嶋 直敏 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 特任教授 (80136530)
打越 哲郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (90354216)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 燃料電池 / 電解質膜 / 無機有機コンポジット / 電極 / 触媒 / 中温 / 界面 |
研究実績の概要 |
我々は、これまで無機固体酸複合体と芳香族系有機ポリマーからなる無機-有機コンポジット電解質膜の研究を行ってきた。本課題では、コンポジット電解質膜を用いた中温燃料電池発電特性を高性能化することを目的として、以下の項目について検討を行っている。 ①コンポジット電解質膜の高性能化 ②電極/触媒/電解質三相界面の設計 ③膜・電極複合体連続発電試験と三相界面の反応・劣化機構解析 特に今年度は、(1)湿式ミリング法によってxCsHSO4-(100-x)H4SiW12O40系無機固体酸複合体ナノ粒子(CHS-WSiA)が合成可能で、ナノ粒子化によってPBIに添加して得らえるコンポジット電解質膜の均質性と発電性能が向上すること、(2)無機固体酸ナノ粒子と同様に、ピロリン酸チタン(TiP2O7)粒子や還元型酸化グラフェン(rGO)をPBIに添加することで中温無加湿燃料電池の発電性能や連続発電特性が向上すること、(3)CHS-WSiAが電極三相界面において有効なイオノマーとして機能すること、(4)rGOがスーパーキャパシタなど種々の電気化学素子の電極材料として有用であることなどを明らかにした。また、研究成果の学術論文としての公表はもとより、関連材料分野の技術調査を行って、国際共著のレビュー論文として積極的に投稿を行い掲載された(Progress in Energy and Combustion Science 2019 IF=26.467 等)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下記の項目において重要な進展があった。 ①コンポジット電解質膜の高性能化:出発物質にKHSO4(KHS)、CsHSO4(CHS)およびH4SiW12O40(WSiA)を用いた混合アルカリ系90(0.5KHS-0.5CHS)-10WSiA複合体が、160℃~40℃において4.9×10-2 Scm-1~1.4×10-3 Scm-1の極めて高い導電率を幅広い温度範囲で示すことを明らかにした。一方、燃料電池発電特性では、50CHS-50WSiAを20wt% 添加したPBI膜がリン酸ドープレベルPADL=8molで150℃無加湿条件下において最大出力378 mWcm-2を達成し、安定して連続発電することを実証した。一方、TiP2O7が有効な無機添加物でとして機能することを見出した。TiP2O7微粒子を2wt%添加したPBI膜がPADL=8molで160℃無加湿条件下において最大出力580 mWcm-2を達成した。また、TiP2O7微粒子がリン酸を保持する機能を有することがわかった。 ②電極/触媒/電解質三相界面の設計:80CHS-20WSiA無機固体酸複合体が優れたイオノマーとして機能し、カソード活性化過電圧を低減することを明らかにした。また、触媒の耐久性向上を目指したPt@TiO2コアシュル粒子の高分解能TEM観察、電気化学比表面積評価などを行い、その有用性を実証した。 ③膜・電極複合体連続発電試験と三相界面の反応・劣化機構解析:PBIに2,2’-bis(4-carboxyphenyl) hexafluoropropane (HFP)を共重合させたF6PBIを用いたコンポジット電解質膜では、リン酸の保持性能と耐酸化性が向上し、50CHS-50WSiAを添加した膜は150℃無加湿条件下で2.14×10-3 Scm-1の導電率を示し、498 mWcm-2の最大出力を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
① コンポジット電解質膜の高性能化に関しては、TiP2O7の成果を発展させて、種々のピロリン酸塩MP2O7微粒子の合成と電解質膜に添加する無機ナノフィラーとしての可能性を探索する。また、還元型酸化グラフェンrGOの電解質膜への添加効果についても詳しく調べる。
② 電極/触媒/電解質三相界面の設計については、超音波スプレー装置を用いて、無機固体酸複合体や新奇炭素系材料をイオノマーとして電極に塗布し、三相界面設計を行う。また、再現性が得られるようにPt@TiO2コアシュル粒子の合成手法を確立する。
③ 膜・電極複合体連続発電試験は、長時間を要するので、これを継続的に実施する。活性化過電圧の変化を系統的に調べ、三相界面のインピーダンス解析を行う。また、新奇炭素系電極材料の電気化学素子への応用可能性を検討する。
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