研究課題/領域番号 |
18H03846
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小西 康裕 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90167403)
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研究分担者 |
野村 俊之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00285305)
荻 崇 広島大学, 工学研究科, 准教授 (30508809)
荻野 博康 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80233443)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオメタラジー / 白金族元素 / 燃料電池 / 電極触媒 / 資源循環 |
研究実績の概要 |
(1)金属イオン還元細菌Shewanella algaeを用いて室温合成したPt粒子(バイオ合成Pt粒子)が、市販Pt/C電極触媒と同程度のシングルナノサイズ(3 nm)であることを、高分解能電子顕微鏡による観察に加えて、粉末X 線回折法による結晶子サイズ測定によって明らかにした。 (2)還元細菌S. algae細胞を破壊(NaOH処理・超音波照射処理)し、細胞ペリプラズムからバイオ合成Pt粒子を液相に剥離させ、バイオ合成Pt粒子懸濁液を調製した。このバイオ合成Pt粒子とカーボンブラック(CB)担体粒子のゼータ電位と溶液pHの関係を定量的に把握した。その結果、溶液pH 6.0の場合には、 CB担体はプラス帯電(+40 mV)、バイオ合成Pt粒子はマイナス帯電(-30 mV)となり、同種粒子の凝集が抑制されて異種粒子間(CB担体-バイオ合成Pt粒子)の静電気引力による付着が促進されることが明らかになった。したがって、バイオ合成Pt/CB触媒の最適な調製条件として、溶液pH 6.0を選定した。 (3)電気化学的測定(回転ディスク電極法によるCV値、酸素還元活性)を行い、バイオ合成Pt/CB触媒の活性を評価した。市販 Pt /CB電極触媒に比べて、バイオ合成Pt/CB触媒の質量活性は80%程度であるが、その面積比活性は高レベル(330 %)であることがわかった。また、バイオ合成Pt/CB触媒の電気化学表面積が市販触媒に比べて低下したことから、バイオ合成Pt粒子が凝集してCB担体に付着している可能性が示唆された。さらに、触媒の耐久性評価試験を行った結果、 1000 サイクル(電位 +0.60V → +0.90V → +0.60V)の終了時点においてバイオ合成Pt /CB触媒は市販Pt /CB電極触媒と同程度の耐久性を示すことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究において、金属イオン還元細菌S. algaeを用いてバイオ合成したPt粒子(バイオ合成Pt粒子)が市販Pt/CB電極触媒の場合と同程度のシングルナノサイズであること、またバイオ合成Pt/CB触媒は市販Pt/CB電極触媒と同程度の耐久性を示すことを明らかにした。ただし、バイオ合成Pt/CB触媒の酸素還元反応(ORR)の質量活性は市販Pt/CB電極触媒(目標値)の80%にとどまった。室温での微生物反応を活用してPt電極触媒を調製する革新的な本研究において、研究開始から2年目の時点において、バイオ合成Pt/CB触媒のORR質量活性は、目標値の80%に改善されている点(昨年度は60%の質量活性)、またORR面積比活性は目標値よりも優れている点を考慮すれば、現在までの研究進捗状況は「おおむね順調」であるとポジティブに受け止めている。 バイオ合成Pt/CB触媒のORR質量活性が目標値の80%にとどまった要因としては、カーボン担体に付着する際にバイオ合成Pt粒子の一部が凝集したことが一因であると考えられる。これを改善するために、金属イオン還元細菌S. algae細胞の物理的・化学的破壊によるPtナノ粒子の液相への剥離方法、またバイオ合成Ptナノ粒子のカーボン担体への担持方法を総合的に見直してブラシュアップする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)使用済み電極触媒からの白金族金属(PGMs)の溶解操作では、環境負荷の少ない溶解液(酸性溶液+酸化剤が一般的)を探索するとともに、PGMs溶解に最適な操作条件を決定する。 (2)PGMs電極触媒のバイオ調製に関しては、Pt単一金属触媒に加えて、二成分金属(Pt/Ru、Pt/Pd、Pd/Auなど)の合金触媒およびコアシェル触媒のバイオ合成にも着手し、電極触媒の金属組成の観点から触媒活性・耐久性の向上をめざす。 (3)微生物細胞の物理的・化学的破壊によるPGMsナノ粒子の液相への剥離方法、またバイオ合成PGMsナノ粒子のカーボン担体への担持方法についてはコロイド科学の学術的基盤を踏まえて確立する。 (4)既存のPGMs触媒調製プロセスとの比較検討を行い、本バイオ調製プロセスの技術面ならびに経済性の両面における特徴を明確にする。この際には、PGMsナノ粒子の量産に向けて「PGMsナノ粒子のバイオ合成操作」のスケールアップにおける課題点を抽出し、その解決策を講じる。さらに、使用済み電極触媒からPGMsナノ粒子触媒の調製に至るプロセス全体を俯瞰し、各工程の要素技術をブラッシュアップすることにより、バイオ調製触媒の活性と耐久性の向上を図る。 (5)研究成果の情報発信に関しては、上記の研究結果を取りまとめ、学会発表を行うとともに、研究論文を投稿する。
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